『ガンダム』改めて振り返る「ジオン驚異のメカニズム」 前後対称構造に「二重コクピット」も…の画像
「機動戦士ガンダム ラストシューティング(ジグソーパズル)」(ビバリー) (C)創通・サンライズ

 テレビアニメ『機動戦士ガンダム』では、地球連邦軍とジオン公国軍による戦いが描かれている。連邦に先駆けてモビルスーツの開発に成功したジオンは、ミノフスキー粒子散布による有視界戦闘のなかで大きなアドバンテージを得た。

 その後もジオンは新たな技術を生み出し、新型機を次々と戦線に投入。当時ガンプラのテレビCMでも「ジオン驚異のメカニズム」という言葉が使われ、ジオンの信じがたい開発速度や技術力を象徴するワードとして、ファンのあいだに浸透した。

 そこで今回は『機動戦士ガンダム』に登場したジオン機のなかで、「驚異のメカニズム」だと実感したものをピックアップ。その摩訶不思議な技術を振り返ってみたい。

※本記事には作品の内容を含みます。

■衝撃の「リバーシブル設計」!? 異色のジオン水泳部

 一年戦争におけるジオンの地球侵攻作戦にともない、水陸両用モビルスーツが多数開発された。その用途と特徴から、ファンのあいだでは「ジオン水泳部」と親しみを込めて呼ばれている。

 ズゴックやアッガイ、ゴッグなどが備える伸縮自在の多重関節構造「フレキシブル・ベロウズ・リム」や、水中機雷を無力化するゴッグの防御ゲル「フリージーヤード」など、ジオン水泳部の機体には個性的な技術が取り入れられていた。

 そんなジオン水泳部の機体の中で、とりわけ特徴的だったのが「ゾック」である。

 アニメ劇中でのゾックはジャブロー侵攻作戦に参加するも、アムロ・レイが乗るガンダムにあっさり撃破された。劇場版に至っては61式戦車と相打ちになる場面が描かれ、あまり活躍したという印象はないかもしれない。

 しかしこのゾックは、9門ものメガ粒子砲を備える火力オバケのような機体だ。そしてこの火力を存分に活かすため、ゾックには「前後対称構造」が採用されていた。

 機体正面と背面にまったく同じレイアウトに武装が配置され、振り向かずとも後方の敵に攻撃を行える。たとえ周囲を敵に取り囲まれたとしても、ゾックの前後に備えたメガ粒子砲によって圧倒的な攻撃を行い、一掃することも夢ではないのだ。

 「前後対称構造」という特異な設計が採用された理由について『週刊ガンダム・モビルスーツ・バイブル 71号』(デアゴスティーニ・ジャパン)には「180度姿勢変換が実用的な水準に達しなかったことが要因」と書かれている。つまり重武装による重量超過により、ゾックの機動力が損なわれたための苦肉の策だったようだ。

 本来のコンセプトから考えると、移動能力を持った砲台のような役割を担えばゾックはもっと輝けたはず。狭い洞窟内でガンダムとMS戦を繰り広げてしまったのが運の尽きといえるだろう。

 それにしてもゾックのような尖った設計の機体を具現化した姿勢に、ジオンの技術者らしさを感じたものである。

  1. 1
  2. 2
  3. 3