■大竹店長が開発した幻のデータベース『くにおくん図鑑』とは

 ところで、私は当時、テクノスジャパンファンクラブの窓口もやっていました。そこで、『熱血格闘伝説』(1992年)の開発が終わったあとに、2週間ほどで『くにおくん図鑑』というソフトをファミコン用に作ったんです。

 ゲームというよりは、くにおくんシリーズに登場する歴代キャラのデータベース。学校の中にたくさんキャラがいて、接触するとプロフィールが見られるとか、そんな感じでした。いつかファンクラブのメンバーへのプレゼントになればいいなと思って作ったんですよね。結局、世に出ることはありませんでした。

 その頃のくにおくんシリーズでは、キャラを横16ドット×縦16ドットのサイズで描くことが多かったのですが、『くにおくん図鑑』では画面にいっぱいキャラを出したくて、もっとちっちゃく描きました。どのくらいちっちゃいかというと……幻のソフトだけにお見せできないのが残念ですが、元ネタがあります。

 くにおくんのゲームは本社でも作っていて、『ダウンタウン熱血行進曲 それゆけ大運動会』もその1本。そのデータを見せてもらったことがあるのですが、ゲームに登場しないちっちゃなキャラが用意されていたんですよ。学校の中での鬼ごっこだったかな、ボツになった競技で使うためのデータだったらしくて。

 で、その没キャラは、『ダウンタウンスペシャル くにおくんの時代劇だよ全員集合!』(1991年)のマップ画面に流用されました。「あれか〜!」とわかってくださる方もいるかもしれませんね。

 “運動会”と“時代劇”は、どちらも同じデザイナーがくにおくんを描いています。絵のうまい方で、同じくにおくんを描くドッターとして尊敬していました。たとえば、くにおくんが歩くシーンは、普通は3枚の絵を使って動いているように見せるのですが、彼は6枚くらい使って、滑らかに見せようとしていた。そんなこだわりのある方でした。彼が描いていたちっちゃなキャラが、頭に残っていたんですね。

 そう、くにおくんを描くドッターは、社内に複数いたんですよ。だからこそ、みんなで切磋琢磨できたかと思います。


※ソフトの値段や状態などは取材時のものです。

 

【プロフィール】
大竹剛(おおたけ・つよし)
「レトロゲーム」に造詣が深い“元ドット絵職人”。ゲームメーカー「テクノスジャパン」で、主に『くにおくん』シリーズにドッターとして参加。現在は「ハードオフTOKYOラボ吉祥寺店」で店長を務める。本人もレトロなゲームのコレクター。

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