■地球侵略には不向き? 致命的弱点を抱えたペガ星人
次にピックアップするのは『ウルトラセブン』の第36話「必殺の0.1秒」に登場した“催眠宇宙人”こと「ペガ星人」だ。
地球を太陽系の侵略基地にしようと目論むペガ星人は、その目的にとって邪魔な存在となる地球防衛軍による「人工太陽計画」の阻止を画策。計画の最高責任者であるリヒター博士を暗殺すべく、まずは地球防衛軍参謀本部のエリート、ヒロタ隊員を催眠術で操った。
人間を自在に操る特殊催眠装置をはじめ、ウルトラセブンを苦しめた光線を発射する機械、さらにはビームやミサイルを放つ高性能宇宙船など、ペガ星人の科学力はかなり高い。
また、リヒター博士が乗った車ごと強奪するために隠し通路まで用意するなど、作戦も大がかり。そのうえ、ソガ隊員をライバル視するヒロタ隊員の対抗心まで把握したうえで籠絡しており、頭脳もかなり優秀といえる。
それほど有能なペガ星人をなぜ取り上げたかというと、実はペガ星人の体は地球の気圧に耐えられないという、あまりにも致命的な弱点があったためだ。おかげでペガ星人は宇宙船の中から出られず、肝心なリヒター博士の暗殺計画も人間を利用するしかなかったのである。
この虚弱体質を克服できていれば、いろいろ手の打ちようがあったかと思うと、少々ペガ星人が気の毒に思えてならない。
■かつて地球を支配したオリオン星人が秘めたウィークポイント
最後に紹介するのは1972年放送の『ウルトラマンA』第25話「ピラミッドは超獣の巣だ!」に登場した古代星人「オリオン星人」だ。
とある小学校の敷地に、赤い煙を噴出する謎のピラミッドが出現。この煙を浴びた人間の白血球を異常に増殖させるという非常に危険なものだった。
実はこのピラミッドは、1万3000年前に地球を植民地にして支配していた古代星人「オリオン星人」の冷凍睡眠装置。突如発生した大洪水から逃れるためピラミッドに避難し、地球上での活動を停止して長い眠りについていた。
本国からの指令を受けて地球の支配に動き出したオリオン星人は、工作員のミチルに命じて超獣攻撃隊TACの新兵器「V9」の破壊を画策。この計画は失敗するものの、TACの南夕子隊員を捕らえた。
超獣「スフィンクス」を送り込んだ際は、南隊員を人質にしてV9を使わせないようにする狡猾さを見せ、任務に失敗した少女ミチルを殺そうとする冷酷さも覗かせている。
そんな極悪非道な宇宙人がなぜ弱いのかというと、その答えは彼らの体質にある。実はオリオン星人は地球上で呼吸ができず、赤いオリオンガスを吸わなければ活動できないという大きな弱点があった。
そのためオリオン星人は、ミチルのほかに外で活動した個体はなく、常にピラミッド内から指示を送るだけだった。1万3000年前の地球ならばそれで支配できたかもしれないが、現代の発達した科学力に加え、ウルトラマンAという絶大な後ろ盾がある地球人類を相手にするには相当分が悪かったのである。
それぞれ致命的な弱点がある宇宙人たちを紹介してきたが、それでも個性は強烈だった。これらの弱点を踏まえたうえで改めてエピソードをチェックすると、弱点を隠しながらもなんとか地球侵略を進めようとする宇宙人たちのけなげな姿に、ある種の哀愁や愛らしさを感じる……かもしれない。