■あまりに理不尽すぎる後味の悪い結末…『けろっこデメタン』

 1973年に放送された『けろっこデメタン』も、タツノコプロが制作した「メルヘンアニメシリーズ」の1作品。アマガエルの子・デメタンが、トノサマガエルの娘・ラナタンと出会い、差別や貧困、いじめなどに立ち向かう物語だ。

 小さな生き物たちの過酷な生活が描かれた同作で、富野氏は全39話中10話の演出を担当。その中でも第4話「守れ!愛のタマゴ」は屈指の衝撃回だった。

 ある日、デメタンとラナタンは、悪ガキたちに大事な卵を割られて涙するカメのおばさんと出会う。ひとつだけ無事な卵を見つけたデメタンはカメのおばさんに手渡すと、それがおばさんにとって唯一の希望となった。

 卵を愛おしそうに見守る母ガメの姿を見たラナタンは、幼い頃に死んだママが恋しくなってしまう。そして父親に、ママはどんな病気で死んだのかを問い詰めて困らせる。

 するとトノサマガエルの父親は、これ以上娘がママのことを言い出さないよう、手下のザリガニに命じてカメのおばさんを襲わせる。ザリガニから卵を守ろうとするカメのおばさんは一方的に暴行を受け、瀕死の状態に……。そしてその場に駆けつけたデメタンとラナタンに大切な卵を託すと、カメのおばさんは力尽きた。

 残された卵を必死に守ろうとデメタンたちは頑張るが、結局卵は奪われ、ラナタンの父親のもとに届けられる。父親はその卵を破壊するよう手下に命じるが、どんなに叩いても変形するだけ。だが、実はその卵の正体は人間が作った「ピンポン玉」だと判明する。

 その後、そんな物を守るためにカメのおばさんが死んだことがショックで、デメタンとラナタンは号泣する。

 そこに現れたラナタンの父親は、実はラナタンの母親は病気で死んだわけではなく、恐ろしいイモリから娘のラナタンを助けようとして食べられたことを明かす。真実を明かせばラナタンが悲しむだろうという親心だった、と。

 最終的に物語は、父親がラナタンを抱きしめて感動的に終わるのだが、まったくのとばっちりで卵を奪われそうになった挙げ句、暴行されて命を落としたカメのおばさんが気の毒でならない。

 母親が文字通り命がけで守り、あとを託された子どもたちも懸命に守ろうとした卵が、実はピンポン玉という皮肉とやるせなさ。理不尽極まりない展開こそが、この演出回の真骨頂であり、圧倒的な後味の悪さをもたらした要因といえるだろう。

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