『平成仮面ライダー』で後味が悪かった「まさかのバッドエンド」 『龍騎』『剣』『ディケイド』など、モヤモヤが残る結末も…の画像
Blu-ray BOX『仮面ライダー龍騎』(東映ビデオ)(C)石森プロ・東映

 ヒーロー作品といえば、悪を打ち倒して世界の平和を守り、最後はハッピーエンドで幕を閉じるのが王道だ。実際、2025年8月に終わったばかりの『仮面ライダーガヴ』も、仲間との絆と未来への希望を描き切り、清々しい最終回を迎えていた。

 しかし『仮面ライダー』シリーズの歴史を紐解くと、必ずしもそうしたハッピーエンドの結末ばかりではないことが分かる。戦いの果てに大切なものを失い、視聴者に重苦しい余韻を残して終わった物語も存在するのである。

 今回は、そんな“バッドエンド”とも呼ぶべき衝撃的な最終回を迎えた『仮面ライダー』作品を、あらためて振り返ってみたい。

 

※本記事には各作品の内容を含みます

 

■救いなきライダーバトルの結末『仮面ライダー龍騎』

 「平成仮面ライダー」の第3作目として放送された『仮面ライダー龍騎』は、そのあまりにも非情な結末ゆえに、シリーズ屈指のバッドエンド作品として語り継がれている。

 物語の舞台は鏡の中の世界・ミラーワールド。そこでは「最後に生き残ったライダーの願いが1つだけ叶えられる」という過酷なルールのもと、13人の仮面ライダーが互いに殺し合う。まさに“仮面ライダー版バトルロワイアル”とでもいうべき内容だった。

 衝撃的だったのは、最終回直前の第49話「叶えたい願い」。主人公・城戸真司(仮面ライダー龍騎)が、ひとりの少女を救うためにモブ怪人の攻撃を受け、あっけなく命を落としてしまうのだ。

 そして続く最終の第50話「新しい命」では、残された秋山蓮(仮面ライダーナイト)が本作のラスボスである仮面ライダーオーディンを倒し、ついに最後のライダーとなる。しかし、その蓮も命を落としたのではないかと示唆されるラストを迎え、その直後に世界は「リセット」されるのである。

 リセット後の世界では、ライダーバトルに参加していた者たちもは戦いの記憶を失い、それぞれの日常を送っている。真司と蓮も出会うが、やはり互いを知らず、思い出すことはない。リセットはある種の救済のようでありながら、どこかやりきれない切なさが残る幕切れであった。

 さらに本作を特異な作品にしているのが、複数のエンディングが存在する点だ。『劇場版 仮面ライダー龍騎 EPISODE FINAL』、テレビスペシャルの『仮面ライダー龍騎 スペシャル 13RIDERS』、さらにはDVDに収録されたテレビ未放送版バージョンなど、いずれも異なる結末が描かれたが、どの物語でもハッピーエンドとは言いがたい、後味の悪さが残るラストが描かれている。

■平和の代償は主人公の“孤独”『仮面ライダー剣』

 「平成仮面ライダー」シリーズ第5作目となる『仮面ライダー剣』もまた、衝撃的な結末を迎えた作品である。

 本作は、現代に蘇った不死生物“アンデッド”と人類の戦いを描いた物語だ。アンデッドたちは地球の支配者を決めるため、「バトルファイト」と呼ばれる戦いを繰り広げてきた。剣崎一真(仮面ライダーブレイド)をはじめとするライダーたちは、人々を守るためにその戦いに身を投じていく。

 その中でも特異な存在が、相川始(仮面ライダーカリス)であった。彼の正体は特殊なアンデッド“ジョーカー”。そして、もしもバトルファイトでジョーカーが勝ち残れば、地球上のすべての生命がリセットされるという恐るべき宿命を背負っていた。

 最終の第49話「永遠の切札」にて剣崎は、人類を守るため、そして始を救うために、自らがアンデッドとなる道を選ぶ。それは、「自分がアンデッドとなり、バトルファイトを永遠に終わらせない」という覚悟の決断だった。

 だが、2人が近くにいれば、アンデッドとしての本能により争わざるを得ない。そのため剣崎は「お前は、人間たちの中で生き続けろ」と言い残し、彼の前から永遠に姿を消してしまう。

 表面上は世界に平和が戻り、人々は日常を取り戻した。しかしその平和は、人間を辞めてアンデッドとして永遠の孤独を生きることになった剣崎の犠牲の上に成り立っている。ただ一人で戦い続ける彼の運命を思うと、切ない気持ちがこみ上げてくる。

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