■作品づくりはすべて実食してから

――本編では毎回お店と料理が登場します。作品づくりにはどのようにされているのですか。

塚原:最初にどんな料理にするかを決めて、実際にお店に食べに行っています。そこで味の感想などをメモするのですが、お店で食べられないような料理は自分で作っていますね。

――ご自身で作るんですか!

塚原:基本的に、取材以外で外食することはなくて、いつも自炊しているんです。作品用の料理では、普段買わないような食材を買ったりすることもありますよ。

――取材時の印象的な出来事はありますか?

塚原:ひろしが激辛カレーを食べる回があるのですが、最初にネームを書く際、自分の学生時代の記憶を頼りに描いたら「リアリティがない」と担当編集に言われてしまって(笑)。これはよくないぞということで、一緒に食べに行くことになったんです。

 そこで一緒に激辛カレー店を2軒回ったのですが、口の中が麻痺するくらい痛くて……。漫画の中に出てきた「もうスプーンを口に運びたくない」というセリフは、リアルな体験から生まれた言葉なんですよ。あまりに痛くて、本当に口に運びたくなかった。やっぱり実際に食べた体験があるほうが作品に生かせるので、それ以降は取材して、料理を食べた後の打ち合わせでどんな話にしようかを詰めていくようにしています。

――漫画を作る上で気を付けていることや、大変なことはありますか?

塚原:まずは料理を美味しく見せるという部分は気をつけています。あとは、お店の描き方ですね。実在するお店をそのまんま描くわけにはいかないので、お店の外観や内装などはアシスタントさんにも頼んでレイアウトをゼロから私が描いています。もちろんこれまで見てきたものはベースにしますが、ほぼゼロからお店を作り上げるような作業なので、そこが大変ですね。

――連載開始から今年で10年、単行本は14巻まで発売されています。この中で、何か変化したことはありますか?

塚原:ひろしの描き方とかは特に変わってないと思うんですけど、一つひとつの描写をすごく時間をかけて描くようになりました。店内の様子も最初よりしっかり描くようになったり、そもそも店内ではなく外で食べる描写も増えたり。今後も毎回ちょっとずつだけでも、新しいチャレンジはやっていきたいです。

――作中には、部下の川口など原作でもおなじみのキャラクターが登場しますが、四杉遥や高桐など、オリジナルキャラクターも印象的です。

塚原:四杉遥は、はじめは1回だけ登場させるつもりで書いたんです。ひろしの行動に一喜一憂する自意識過剰なキャラなのですが、評判がよかったので、担当さんが「面白いので、単行本1冊につき1話載せましょう」と言ってくれて。いわば準レギュラーみたいな立ち位置で、毎巻登場させています。

 それから高桐くんのモデルは、実は当時、一緒に食事をした双葉社の新入社員なんですよ。若い子で個性もはっきりしているから、物語にドラマ性を持たせるのに使いやすいですね。

  1. 1
  2. 2
  3. 3