
アニメ第2期が最終回を迎えたばかりの人気漫画『ダンダダン』。宇宙人や幽霊、妖怪、UMA(未確認動物)などが登場するオカルティックバトル作品だ。
龍幸伸氏が描く、オカルト要素がぎっしり詰まった同作には、個性豊かな怪異たちが活躍。オカルトに詳しくない読者をも魅了している。
では、そんな『ダンダダン』という作品を「オカルトの専門家」はどのように見ているのだろうか。今回はオカルトに造詣が深い、作家でUMA研究家の中沢健氏に、他のオカルト作品と一線を画す『ダンダダン』の魅力や、作中にも登場するUMAにまつわる話を聞いてみた。
■『ダンダダン』マニアもうなずく本格オカルト要素とは?
――『ダンダダン』を初めて読んだ時、率直にどのような印象を受けましたか?
中沢:最初のつかみから面白かったですね。オカルトをモチーフにした漫画は過去にもいろいろありましたが、主人公の高倉健、通称オカルンが、ヒロインの綾瀬桃に「綾瀬さん! オカルト好きなんですか!?」と問いかけるシーンで振った話題が「プロジェクト・ペガサス」(※)だったことに驚きました。
※プロジェクト・ペガサス:1960年代、アメリカで行われたという極秘火星移住計画。火星に建設されたアメリカの秘密基地へ人々をテレポーテーションすることを目的とした実験。
よくあるオカルト漫画だとネッシーやロズウェル事件など、オカルトでもメジャーな話題をつかみに持ってくると思うんです。でもマンガの最初に出す都市伝説が「プロジェクトペガサス」というのがかなりマニアックで、攻めてるっていうか(笑)。
――マニアがうなるようなチョイスだったワケですね。
中沢:かつて私はCSのファミリー劇場で放送されていた『緊急検証!』というオカルト番組にレギュラーで出演していました。番組で初めてUMA特集をすることになったときに「とっておきのネタを出さなければ」と悩んだ結果、私もプロジェクト・ペガサスの話を披露したんです。研究家として「初手で出す、とびきりのネタ」がオカルンと完全に重なっていて、すごくうれしかったですね。
――オカルト研究者の目線で「面白い!」と思ったシーンは?
中沢:序盤でオカルンが「UAP(未確認異常現象)」の話をしていたのも印象的でした。UAPは、日本では一般的に「UFO(未確認飛行物体)」と呼ばれてきましたが、アメリカ国防総省は「UAP」という表現を正式に採用しており、専任部署まで設置して調査を進めています。
ただ、日本のニュース番組では「国防総省がUFOを認めた!」と報じられ、『Xファイル』のテーマ曲を流してオカルト感を強調するような演出がほとんどです。
私たちは「アメリカが認めたのはUFOではなくUAPだ」と繰り返し訴えてきましたが、世間一般ではどうしても「UFO」のほうが知られているのです。
でも、オカルンはこの辺りの定義がしっかりしていたので、素晴らしいと思いましたね。
――『ダンダダン』ならではの魅力は?
中沢:オカルトを扱った漫画はかなり多いのですが、初心者向けのやさしい解説が多く、オカルトの入り口でずっと遊ぶような作品が大半です。
ですが『ダンダダン』を読んだときにオカルンの出すワードがいちいちマニアックなところを突いていて、1巻から心をつかまれました。
あと1話でいうと、キャラ設定も面白いと思いました。オカルンはUFOやUMAを信じてるけど、幽霊を信じていない。ヒロインのモモは対照的に、幽霊は信じているけどUFOやUMAは信じてない……。この立ち位置がとてもリアルで、実際オカルト界隈でも派閥が分かれるところなんです。マニア的にも人物設定が非常に自然で、入り込みやすかったですね。