■モコのお父さんが銀行強盗!? 原作漫画『ひみつのアッコちゃん』の最終回
赤塚不二夫さん原作の『ひみつのアッコちゃん』は、1962年に『りぼん』で連載が始まり、その後『なかよし』(講談社)などでも掲載され、複数のバージョンが描かれてきた。
それゆえに最終回もいくつか存在するが、ここでは初のテレビアニメ放送に合わせて執筆された『りぼん』第2期、1969年12月号に掲載された最終回「銀行強盗大ついせき」を紹介したい。
物語は、偶然、アッコが銀行で強盗事件に遭遇する場面から始まる。翌日、友人のモコから「犯人は自分の父親かもしれない」と、衝撃の告白を受けるのだった。
アッコは魔法のコンパクトを駆使し、子どもの姿に変身してモコの父を尾行したり、銀行員に変身して説得を試みたりと奮闘していく。
やがて、本物の銀行強盗が捕まり、モコの父は無実だったことが明らかに。ラストは、モコが涙を流しながら「おとうさんがギャングでなくてよかった!!」と、安堵するシーンで締めくくられる。
このように漫画版の最終回は、日常の延長にある事件をいつもの調子で解決し、魔法のコンパクトも健在のまま。「最終回」というよりは「最後のお話」といった印象だ。
■パパの船を救え! アニメ版『ひみつのアッコちゃん』の最終回
アニメ第1期の最終回は、1970年10月26日放送の第94話「さようなら私のコンパクト」であった。こちらは原作漫画とは対照的に、ドラマチックな最終回となっている。
キャンプのため希望ヶ島を訪れていたアッコたちだったが、そこに台風が直撃。島の灯台も壊れ、付近を航行する船舶が危険にさらされてしまう。さらに不運にも、その中には近海を航行していたアッコの父が船長を務める大型客船「日本丸」の姿もあった。
アッコは魔法のコンパクトの力を使い、世界中の鏡の光を集めて即席の灯台を造り出す。光は父の船を正しく導き、無事に危機を乗り越えることに成功した。しかしその代償として、コンパクトは力を使い果たし、ついに消滅してしまうのだった。
魔法を失ったアッコは、寂しさを抱えながらも、後悔のない晴れやかな表情を見せる。アニメ版の最終回は「魔法との別れ」を強く印象づけ、感動的な余韻を残すものとなっている。
昭和の時代を彩った『魔法使いサリー』と『ひみつのアッコちゃん』。魔法少女を代表する2作の最終回を見比べると、原作漫画とアニメ版、それぞれの個性が際立っていることがわかる。
原作漫画は日常の延長に物語を置き、静かでしみじみとした余韻を大切にしていたのに対し、アニメでは「別れ」や「喪失」を強調し、印象的なクライマックスで締めくくられている。
はたして、あなたはどちらの最終回に心を惹かれるだろうか。