“魔法を失う”か“故郷に帰る”か…昭和の魔法少女作品『魔法使いサリー』と『ひみつのアッコちゃん』「原作とアニメの最終回の違い」の画像
『ひみつのアッコちゃん』完全版 1巻(河出書房新社)

 昭和の少女漫画史を語るうえで欠かせない『魔法使いサリー』と『ひみつのアッコちゃん』。どちらの作品もアニメ化され、絶大な人気を誇る名作である。

 だが、原作漫画とアニメでは、最終回の描かれ方に大きな違いがあることをご存じだろうか。今回は、この2つの作品を取り上げ、原作とアニメそれぞれの最終回を振り返りながら、その違いに込められた意味を探ってみたい。

 

※本記事には各作品の内容を含みます

 

■少女を助けるために…原作漫画『魔法使いサリー』の最終回

 横山光輝さん原作の『魔法使いサリー』は、1966年から少女漫画雑誌『りぼん』(集英社)に連載され、最終回は1967年9月号・10月号の2話にわたって掲載された。

 物語は大型台風の襲来から始まる。川の氾濫で流される少女を、主人公・夢野サリーと弟分であるカブが救い出すものの、少女はすでに息をしていなかった。急いで病院に運ぶが、医師からは非情にも「手遅れ」と告げられてしまう。

 サリーは魔法の国の国王である父に助けを求めるが、生命を与える魔法は国王である父にとっても至難の業だった。父は、“サリーが魔法の国へ帰ること”を条件に、その魔法をかけ、少女を奇跡的に生き返らせる。

 しかし、帰国を約束してしまったサリーの心は晴れない。だが、そこに助けた少女の両親が駆けつけ、涙を流し娘を抱きしめる姿を見て、サリーは自分に帰ってきてほしいと願う父の親心を理解するのである。

 そして最後にサリーは「なんだかパパやママにあまえたくなっちゃった」と呟き、カブとともに笑顔で魔法の国へ帰っていく。原作漫画のラストは「家族の絆」を軸に、静かでしみじみとした余韻を残す結末だった。

■ダンスパーティーが迫る! アニメ版『魔法使いサリー』の最終回

 一方、1968年12月30日に放送されたアニメ版の最終回、第109話「さよならサリー」。こちらもサリーが魔法の国へ帰るという点は同じだが、経緯や描き方は原作以上にドラマチックだった。

 魔法の国ではサリーの社交界デビューを飾るダンスパーティーが控えており、帰国の日が迫っていた。人間界に残りたいと願うサリーに対し、祖父の大魔王は、“学校の試験で魔法を使わず1番を取れば、1年間の猶予を与える”と、厳しい条件を出す。サリーは必死に勉強したのだが、結果、サリーの望みは叶わなかった。

 帰国を前に、サリーは親友のよし子やすみれ、けんちゃんに自分が魔法使いであることを打ち明ける。しかしあまりに突然の告白に、仲間たちは戸惑い、信じようとしない。そんな中、学校で火災が発生。サリーは思い出の詰まった学び舎を守るため、友達の前で初めて魔法を使う。その姿を見た仲間たちは、ようやく真実を理解するのだった。

 火事を鎮めたサリーは、迎えにきた天空の馬車に乗り、仲間たちに惜しまれながら魔法の国へと帰っていく。原作にはなかった「魔法使いの告白」と「友人との別れ」の要素を強調した、アニメ版オリジナルの最終回となっていた。

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