ただの敵役じゃなかった…『仮面ライダーガヴ』視聴者の胸を打った「ストマック兄弟」の最期の画像
『仮面ライダーガヴ」メインビジュアル(公式Xより) © 2024 石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映 ©石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映 ©東映・東映ビデオ・石森プロ ©石森プロ・東映

 8月31日の放送でついに最終回を迎えた『仮面ライダーガヴ』。最後まで主人公・仮面ライダーガヴことショウマの前に立ちはだかったのは、彼の異母兄弟姉妹でもあるストマック家だった。

 長年『仮面ライダー』シリーズを見てきた筆者だが、このストマック家は歴代でもトップクラスの“敵役”だったと思う。同作は異世界・グラニュート界からやってきた主人公・ショウマを主人公にした物語で、仮面ライダーガヴは、グミやケーキといったお菓子をモチーフとしたポップなデザイン。だが、一方で人間たちはグラニュート界の嗜好品である闇菓子の材料に利用されており、その製造・密売を行っているのがストマック家が経営するストマック社だった。

 塚本高史さん演じる長男ランゴ・ストマックをはじめとするこのストマック家の面々が、全編に渡って強烈な個性を放っていた。それぞれに信念を持ち、実の弟であるショウマとの壮絶な戦いの果てに散っていく姿は、まさに「もうひとつの主人公チーム」と呼びたくなるほど印象的なものだった。

 では、彼らは最期に何を抱えて散っていったのか。改めてストマック兄弟姉妹たちのラストを振り返ってみたい。

※本記事は作品の内容を含みます。

■弟のために消えた次女シータ

 次女シータ・ストマック(川﨑帆々花さん)の最期は、意外にも物語の序盤で訪れる。

 半ズボンの黒いフォーマル衣装に身を包み、中性的なルックスが印象的な彼女。容姿や性別が逆転している双子の弟ジープ・ストマック(古賀瑠さん)と、いつも二人で描かれることが多かった。

 異母のショウマを除けば、一番年下ということで、一家の中では存在が軽んじられている印象が強い二人。ストマック社では仕入れを任されていたものの失敗続きで、ついに長男ランゴから解雇を言い渡されてしまう。家を飛び出したシータとジープは、ショウマへの復讐にその存在意義を賭ける。

 迎えた直接対決。双子ならではの連携でショウマ(=仮面ライダーガブ)を追いつめ、必殺技の撃ち合いでも一度は勝利する。だが第14話「奇跡の覚醒!ケーキング」で、ケーキングフォームで強化したガブに押し切られ、一転、窮地へと追い込まれてしまう。

 そして必殺技“ケーキングブレイキング”が放たれた瞬間、シータは弟ジープを守るため迷わず彼を突き放し、「フッ……よかった……」と呟く。

 消滅の間際にシータからこぼれたのは、怒りや悲しみではなく、ジープを守れたことへの安堵だった。登場から嫉妬と怒りに駆られていたシータだったが、最後に見せたものは、復讐よりも何よりも大切な“家族への想い”だったのだ。

 一方、残されたジープは絶望の中でジャルダック家の娘リゼルに拾われる形で結婚。シータの死がジープを苦悩させ、さらにはストマック家全体を波乱へと巻き込んでいくことになった。

■寂しさを吐露した長女グロッタ

 妖艶な長身美女の人間態として登場した長女グロッタ・ストマック(千歳まちさん)。兄弟の中でも随一の武闘派であり、ショウマの母・井上みちるを“ヒトプレス”で葬り、さらにラキアの弟・コメルを粛清したのも張本人である。

 物語中盤、ストマック社はジャルダック家に奪われ、さらに「兄ランゴは死んだ」と知らされる。孤独と絶望に追い込まれた彼女は、「ストマック社を守れるのはもう私しかいない」と暴走し、大叔父デンテまでも手にかけてしまう。

 そして迎えた第40話「追憶のアラモード」。寂しさを紛らわせるように戦い続けるグロッタの前に、ショウマとラキア(=仮面ライダーヴラム)が立ちはだかる。かつて弟コメルを奪われたラキアにとっては、まさに因縁の相手だ。激闘の末、ヴラムの必殺技“プリンテンペスト”が炸裂し、傍若無人を極めたグロッタもついには敗れるのだった。

 満身創痍で逃げ延びた彼女は、人間界のガードレール下で孤独な死を覚悟する。だがそこに現れたのは、死んだと知らされていた兄ランゴだった。

 死に際に幻を見ているのだと勘違いしたグロッタは、「そっかぁ……やっぱり私、寂しかったのね……」 と、小さく本音をこぼす。

 最後に兄の腕の中で安堵の笑みを浮かべながら、嬉しそうに息を引き取ったグロッタ。誰よりも冷徹で強く見えた彼女こそ、実は一番“家族の絆”を求めていたのかもしれない。

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