■日常きらら系アニメの代表作!『ひだまりスケッチ』
最後に取り上げるのは、蒼樹うめ氏の4コマ漫画を原作とする『ひだまりスケッチ』シリーズ。2007年に第1期アニメが放送され、2013年に放送された『沙英・ヒロ 卒業編』まで続いているアニメシリーズだ。
物語の舞台は、やまぶき高校美術科に通う女子高生たちが暮らすアパート「ひだまり荘」。1年生のゆの、天真爛漫な宮子、クールな沙英、面倒見の良いヒロという4人による日々の出来事を紡いでいく。
第3期からは後輩の乃莉となずなが加わり、にぎやかな6人の共同生活に発展。脇を固めるのは、個性的すぎる美術教師の吉野屋先生や無口な校長先生、自由奔放な大家さんといった大人たちで、彼女たちの距離感が絶妙なスパイスとなっている。
いわゆる“きらら系”といわれる日常アニメの代表格で、シャフト独特の画面デザインや遊び心のある演出が、作品の個性を生み出している。
印象的なのは、キャラクターたちの小さな成長を丁寧に積み重ねていく構成だ。特に『沙英・ヒロ 卒業編』では、シリーズを通して見守ってきたキャラクターの門出が描かれ、ファンの心を大きく揺さぶった。
派手なバトルや衝撃的な展開はないが、淡々とした日常を魅力的に映し出す技術は「新房監督×シャフト」ならでは。学園生活の細やかな空気感や、作画や色彩設計の工夫、時折差し込まれるユーモラスな演出が合わさり、視聴者に「こんな日常を覗いていたい」と思わせる温もりを持つ作品である。
原作漫画は『まんがタイムきららキャラット』(芳文社)にて不定期で連載が続いており、アニメの新作発表はないものの、再放送や配信で触れられる機会がある。『〈物語〉シリーズ』『魔法少女まどか☆マギカ』などと比べて日常芝居に最適化されたシリーズでもあるため、「ゆるめのシャフトらしさ」を体験したい人にはおすすめの作品だ。
創業以来50年にわたり、個性豊かな作品を生み出してきた株式会社シャフト。そして2025年現在、梅津泰臣氏とタッグを組んだ『ヴァージン・パンク』で新たな挑戦を始め、冬には「シャフト50周年展」でその歩みを振り返る機会も用意されている。
もしまだ見ていないシャフト作品があれば、この節目のタイミングにこそ手を伸ばしてほしい。