■「会話劇アニメ」の金字塔!『〈物語〉シリーズ』

 次に紹介するのは、西尾維新氏による同名のライトノベルシリーズを原作とする『〈物語〉シリーズ』。2009年に放送された『化物語』を皮切りに、『偽物語』『猫物語(黒)』『〈物語〉シリーズ  セカンドシーズン』『憑物語』『終物語』、2024年の『〈物語〉シリーズ オフ&モンスターシーズン』など、数々の続編が放送された長期シリーズだ。

 主人公である高校生・阿良々木暦は、ある日吸血鬼の力を持つ存在となり、不死身の体を手に入れてしまう。その出来事をきっかけに、彼の周囲では人間の心の闇や悩みが具現化した「怪異」が次々と現れ、戦場ヶ原ひたぎ、八九寺真宵、羽川翼など彼のクラスメイトや関係者が巻き込まれることに……。恋愛や友情、そして怪異にまつわる因果と選択が複雑に絡み合う群像劇となっている。

 本作で特徴的なのは、会話劇の演出の数々だ。

 「かみまみた」
 「何でもは知らないわよ。知ってることだけ」
 「僕はキメ顔でそう言った」

 などの独特なセリフ回しが多数登場し、会話は膨大なテキスト量と巧みな比喩表現で展開される。シャフトはそれらを、首を傾ける独特の構図「シャフ度」や、極端なローアングルやハイアングル、画面に唐突に挿入される文字や実写映像といった大胆な記号演出で映像化した。

 初見だと荒唐無稽な表現に見えるかもしれないが、原作の会話劇を損なわないよう、キャラクターの心理や会話のリズムを強調し、アニメにも独特のテンポを生み出している。

 また、各章ごとにヒロインが異なり、それぞれのOPテーマを制作する試みも話題に。特に声優・花澤香菜さんが演じた千石撫子の『恋愛サーキュレーション』は、SNS等で何度もリバイバルヒットを遂げるなど、時代を超えて愛される楽曲となっている。

 そして2025年7月には『〈物語〉シリーズ オフ&モンスターシーズン』の新エピソード制作決定が発表された。『~物語』という名称が多く、かつ描かれる時系列が作品ごとに異なるため初見時にはどこから見ればいいか迷うかもしれないが、『化物語』『偽物語』……と、素直に放送順に見るのがおすすめ。

 物語の答え合わせをしながら独特の会話を楽しむことで、作品世界により深く浸れるはずだ。

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