■無邪気ゆえの怖さがあった、グラニュート界の大統領令嬢リゼル・ジャルダック

 最後に紹介するのは、グラニュート界の大統領ボッカ・ジャルダックの愛娘リゼル・ジャルダックだ。物語中盤、ストマック家の三男ジープ・ストマックの婚約者として衝撃的に登場し、その存在はストマック家さらには人間界の双方に大きな波紋を広げた。

 人間態のリゼルは、銀髪の縦ロールに濃青のゴシックドレス、水色の日傘を携えた、まさに“お嬢様”な風貌。世間知らずで好奇心旺盛であり、眷属を伴わず単身で未知の世界・人間界へ飛び出す大胆さも持つ。しかしその裏には、傲慢で冷酷な一面が潜む。夫であるジープを「かわいいお人形」としか見ず、人間を「ちっぽけで壊れやすいオモチャ」と言い放つ。

 怪人態は、クトゥルフ神話の邪神“ニャルラトホテプ”をモチーフにしながらも、意外にもネズミのようなかわいらしいビジュアル。しかし、その見た目に騙されてはいけない。強さは父ボッカ譲りで、初対面のガヴとヴラムを一撃で変身解除に追い込むほどだった。笑顔で繰り出される容赦ない攻撃、無邪気さに潜む狂気こそが、敵役としてのリゼル最大の魅力である。

 ちなみに、演じる鎌田英怜奈さんは2009年生まれの15歳。0歳から芸能活動を始め、すでに数多くの作品を経験した若きベテランだ。リゼルという“異彩の敵ヒロイン”を見事に演じている。

 登場時から一貫して“お嬢様”だったリゼルだが、最終回に向けて徐々に状況が変化しており、ジープに対しての感情の変化も見せている。リゼル、そしてジープの物語がどう終焉を迎えるのか、非常に気になるところだ。

 本作は、ギャル系ヒロインの甘根幸果を筆頭に、敵味方を問わず強烈な個性と物語性を持つ女性キャラクターが物語を彩った。今回は紹介しきれなかったが、ストマック家の最初の退場者となった次姉・シータ(川﨑帆々花さん)や、その双子の弟・ジープ(古賀瑠さん)といった中性的キャラも、唯一無二の世界観を築く重要なピースである。

 そして物語はいよいよクライマックスへ。最終回に向け、期待と緊張は高まっていくばかりだ。

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