■郷秀樹の心を揺さぶるため、凶悪宇宙人がとった非情な手段

 最後に紹介するのは1971年放送の『帰ってきたウルトラマン』の第37話「ウルトラマン 夕陽に死す」と第38話「ウルトラの星 光る時」に登場した「ナックル星人」だ。

 ナックル星人は、地球侵略を進めるうえでウルトラマン(ジャック)の存在が最大の障害になると判断。その技や武器を分析するため、「シーゴラス」「ベムスター」といった、かつてウルトラマンに倒された怪獣を復活させてまた戦わせる。

 それで得たデータを調べた結果、ナックル星人が従える怪獣「ブラックキング」でも勝てるかどうか怪しいと判明する。すると次にナックル星人は、郷秀樹として生きるウルトラマンの心を揺さぶるため、彼の恋人である坂田アキに目をつけた。

 そしてナックル星人はアキの拉致を実行に移す。このとき、アキの兄である坂田健を車でひき殺し、アキもナックル星人の車に引きずられて重傷を負い、命を落とすことになる。

 恋人のアキと恩人でもある健の死に、郷は激しく動揺する。この機に乗じてナックル星人はブラックキングとともにウルトラマンに戦いを挑んで勝利。ウルトラマンをナックル星まで連行して処刑しようとする。

 その後、ウルトラマンを救出すべく現れた初代ウルトラマンとウルトラセブンの活躍もあって最終的には敗れたが、ここまで徹底的にウルトラマンを痛めつけた宇宙人は珍しい。何より郷にとって大切な人々を容赦なく殺害した、ナックル星人の非情さがとにかく恐ろしかった。


 このように昭和の『ウルトラマン』シリーズに登場した宇宙人たちは、その存在感だけでなく、地球侵略時の作戦でも強烈な印象を残したものも多い。残酷かつ非道な作戦をためらいなく決行した宇宙人たちは、強力な怪獣以上に恐ろしい存在に思えた。

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