
1966年放送の『ウルトラQ』から始まった『ウルトラマン』シリーズには、地球をわがものとすべく、さまざまな宇宙人が襲来。あの手この手を使って地球人やウルトラマンを悩ませた。
中には『ウルトラセブン』に登場したペガッサ星人のように、自分たちの暮らす宇宙空間都市「ペガッサ市」との衝突を避けるため、地球に軌道修正の要請をしてくるような存在もあったが、これは極めてまれなケース。ほとんどの宇宙人は、地球に対して侵略の野望をむき出しにして襲いかかってきた。
そこで今回は、昭和の『ウルトラマン』シリーズに登場した宇宙人たちによる冷酷な作戦をピックアップ。当時、子ども心に「えげつない」と思った非道な作戦の数々を振り返ってみよう。
※本記事には各作品の内容を含みます。
■どこが紳士的? 子どもを狙った「卑劣な宇宙人」
最初に紹介するのは、1967年放送の『ウルトラマン』の第33話「禁じられた言葉」に登場した「メフィラス星人」だ。
科学特捜隊に所属するフジ隊員の弟であるサトルが航空ショーを楽しんでいたとき、いきなり頭の中に謎の声が鳴り響く。その声の主はメフィラス星人で、サトルに対して力を誇示するため、原油を満載した巨大タンカーを空に浮かべて爆破した。
その後、メフィラス星人はハヤタ隊員とフジ隊員、そして弟のサトルを拉致。“紳士”を自称するメフィラス星人は力ずくでの地球侵略は嫌だといい、地球人代表として選んだ子どものサトルに「地球をあなたにあげましょう」と言わせようとする。
それを拒絶されたメフィラス星人は、永遠の命をエサにしながら地球を渡すよう執拗に迫る。その裏でサトルの姉のフジ隊員の意思を奪い、巨大化させてから街に出現させるという奇妙な作戦を実行した。
さすがの科学特捜隊もフジ隊員には手を出せず、黙って見守るしかない。さらにサトルが要求をのまないと見るや、メフィラス星人はフジ隊員を操って街の破壊を試みる。
地球の交渉役に子どもを選び、なおかつその姉を人質にして要求をのませようとするメフィラス星人の行動は卑劣そのものだった。
結局、ウルトラマンと戦闘して互角の実力を見せながら、自らが危険を冒すのが嫌だったのか「宇宙人同士が戦ってもしょうがない」と言い出し、決着をつけずに姿を消す。筆者はこれも卑怯に感じたものだった。
なお『ウルトラマンタロウ』の第27話にはメフィラス星人二代目が登場。このときも地球の子どもたちを虚弱にするという卑劣極まりない作戦を決行している。
■人間同士の自滅を狙った非情な作戦とは?
続いては1967年放送の『ウルトラセブン』第8話「狙われた街」に登場した「メトロン星人」だ。
このエピソードでは、暴走するタクシーがいきなり出現。運転手が女性の客に暴力を振るうという衝撃的なシーンから始まる。さらに飛行機の墜落事故やタンカー爆破事件など、悲惨な出来事が次々とモロボシ・ダン(ウルトラセブン)の耳に入ってくる。
さらに、街では民間人によるライフル乱射事件が発生。ウルトラ警備隊の基地でも、フルハシ隊員やソガ隊員が突然暴走し、取り押さえられる騒動が起こっていた。
ダンがこれらの事件を調査したところ、北川町で売られていたタバコに原因があることが判明。このタバコには「宇宙ケシの実」に似た赤い結晶体が含まれていて、これを吸い込んだ人間は理性を失い、他人に殺意を抱くようになるという。
この危険なタバコを広めたのが、地球の壊滅を狙うメトロン星人である。理性を奪って地球人同士の信頼関係を失わせ、人類を自滅させるという恐ろしい実験を行っていたのだ。実際、メトロン星人のタバコのせいで発生した事件や事故によって相当数の人間が殺害されており、かなり陰湿なやり口だった。
メトロン星人といえば、ダンとちゃぶ台を挟んで討論する場面が有名だが、彼の行った作戦自体は狡猾にして実に無慈悲なものといえるだろう。