1980年代といえば、テレビ、アニメ、ゲーム、おもちゃなど、数々のブームが巻き起こったアツい時代。そんな熱狂の真っ只中を生きたのが、昭和47年(1972年)生まれの芸人・土田晃之。“華の47年組”の一人として、著書『僕たちが愛した昭和カルチャー回顧録』を上梓した彼が、子どもの頃に堪能した「昭和カルチャー」を独自の視点で語り尽くします!
■自分も出たい!『小学一年生』懐かしのフレーズ
みなさんは 「子どもの頃に見た懐かしいCM」 と言われたら、どんなCMを思い出しますか?
僕が真っ先に思い出したのは、 「♪ピッカピカの一年生」のフレーズでお馴染みの 『小学一年生』 (小学館) のCMです。
毎年、入学シーズンになると流れてくるCMで、実際に今度小学生になる新1年生の子たちが登場してカメラに向かって、好きなことを言う。
「テストで100点取りたいです!」
「1年生になったらお当番を頑張りたいです!」
そんな抱負みたいな真っ当なことを言う子もいれば、
「新幹線の運転手になりたいです!」
みたいな夢を語る子もいるし、
「私が好きな男の子は4人います!」
なんて、いきなり告白しちゃう子もいたり。
素のまんまの子どものしゃべりだから面白いですよね。あのCMを見るたびに、たぶん子どもたちはみんな思ったんじゃないですかね。「自分も出たいな」って。
『小学一年生』 の雑誌自体はよく覚えてないけど、CMはいまでもよく覚えてます。
■今だと流せない?『フジカラープリント』
80年代のCMでいうと、樹木希林さんと岸本加世子さんが出演した『フジカラープリント』 (富士写真フイルム) のCMも面白かった。
フィルムをプリントしにやってきた希林さん (きれいに着物で着飾ってる) が店員役の岸本さんに、
「お見合い写真なものですから特に美しく」
ちょっと恥じらいながらそう頼むと、店員さんは淡々と事務的に、
「フジカラープリントでしたら美しい方はより美しく。そうでない方は……」
「そうでない場合は?」
「それなりに写ります」
「それなりに……ですか」
この2人の掛け合いがものすごく面白くて、よくできたコントみたいなCMでした。
このCMの 「それなりに」 は流行りましたよね。当時小学校3年生ぐらいだった僕は、樹木希林さんのことをてっきり“コントの人” だと思ってました。
樹木希林さんと同じように 「この人、面白いなぁ」 と思って見てたのが研ナオコさん。オンタイムでは見てないけど、愛川欽也さんと共演した 『ミノルタ一眼レフ』 (ミノルタカメラ) のCMが面白いですね。
「最近、僕はミノルタ一眼レフに凝っている。しかも美人しか撮らん」
愛川さんがカメラを持ってそう言うと、横に並んでる研さんが 「エヘヘヘヘ」 と研さん独特の表情を崩した顔で笑う。それを見た愛川さんがひと言。
「だからシャッターを押さない」
その横でまだ笑ってる研さん。
なんともシュールなCMでいま見てもインパクトあります。それにしても 「美人しか撮らん」って、いまだったら放送できないかもしれませんよね。
樹木希林さんと研ナオコさんは僕のなかでは、とにかく “面白い人”のイメージでした。間の取り方とか表情とか、子どもながらに 「すごいなぁ」 と思って見てました。


