■『太陽にほえろ!』ラストシーンの謎が解けた!
以前、『出没!アド街ック天国』の“中村橋”の特集に、小さい頃中村橋の隣の練馬に住んでたからっていう理由で出演したんだけど、中村橋の駅(西武池袋線)の横の線路沿いに、いまは美術館になってる場所があるんです。
そこが元々工場で、実はそこがジーパン刑事の亡くなるシーンを撮った場所だってことが紹介されて、「え、俺が住んでた隣町でジーパン死んだんだ!」って初めてその時知って。
「だから電車の音が聞こえたのか~!」って、小4以来、ずっと気になってたことが解決したっていう出来事がありました。
そもそも『太陽にほえろ!』は昭和の大スターの石原裕次郎さんと、当時ものすごく人気のあったショーケンを一緒に出したいってことで始まったドラマなんですよね。ショーケンが新人刑事のマカロニで、石原裕次郎さんが七曲署捜査第一係の係長(ボス)役。脇を固めていたのが、ゴリさん(竜雷太)とか山さん(露口茂)とか長さん(下川辰平)とかベテラン俳優が囲んで。
マカロニ刑事が成長していく姿を描くドラマだったはずが、途中で主役のショーケンが「辞めたい」って言い出して。当時のショーケンはスターだから周りも止められない。それで“どうしようか?”ってなって。
岡田さん(岡田晋吉)っていう日テレの担当プロデューサーが知りあいの村野さん(村野武範)とマージャンか何かやってた時に村野さんから、「この前観にいった文学座にひとり面白いやつがいた」っていう話になって、岡田さんが実際に文学座を観にいったら、ひとりだけ背がずば抜けて大きくて目を引く役者がいた。
それが優作さんだった。一目見て、「何かこいつ持ってるな」って感じた岡田さんが、1回試しにドラマに使ってみることにして。実はジーパン刑事で登場する前に出てるんですよね。優作さんは市役所の福祉課の純朴な青年役で(第35話『愛するものの叫び』)。
マカロニと対峙して言いあいをするシーンなんですけど、そのシーンが終わった時に、自然とスタッフから拍手が起きたっていう。それで「じゃあ、あいつでいこう!」ってできたのが“ジーパン刑事”。
■ドラマ史に残る名アドリブ
最終回のジーパンの死に際はすごかったですね。あれ、台本は1行しか書いてないんですよ。
『ジーパン撃たれる』
それだけしか書いてない。全部優作さんが自分で作ったセリフと芝居なんですよね。
優作さんが亡くなる前に出演した最後のトーク番組が『オシャレ30・30』っていう番組で、その時にジーパンが死ぬシーンの映像が流れて。VTR明けに優作さんがひと言、「若かったねぇ」って。
「そもそも人が死ぬ時っていうのはさ、どんな人でも泣きながら死ぬんだよ。この世に未練残しながら」ってことを語るんですよ。
番組を見た当時は、“そういう想いであのシーンを演じてたのかな”ぐらいに思っていたけど、それから1年もしないうちに優作さんが膀胱癌で亡くなって。いま思えば、自分が死ぬことを分かってて、その想いを語っていたんでしょうね。
【プロフィール】
土田晃之(つちだ てるゆき)
1972年9月1日生まれ、東京都練馬区出身・埼玉県育ちのお笑いタレント、司会者、コメンテーター。太田プロダクション所属。1991年にお笑いコンビ「U-turn」としてデビューし、解散後はピン芸人としてバラエティ番組や情報番組で幅広く活躍。ガンダムやサッカー、家電など多彩な知識を持ち、親しみやすいトークで人気を集めている。『僕たちが愛した昭和カルチャー回顧録』が、2025年8月20日より双葉社から発売。


