
『ファイナルファンタジー』(以降、『FF』)シリーズ(スクウェア・エニックス)には、ほぼすべての作品に登場しているキャラクターがいる。それが「シド」と呼ばれる人物だ。
シドは、ファミコン版『FF2』で初登場して以来、最新作の『FF16』まですべての作品に登場。なお、初代『FF』のリメイク版にも名前が出てくるため、実質ナンバリングタイトル皆勤賞を果たしたキャラといえるだろう。
なお各作品ごとの「シド」は同一人物ではなく、毎回別人で血縁関係なども存在しない。ただし、『FF』シリーズでは定番の「飛空艇」にまつわるエピソードを持っていたり、ヒゲが似合う壮年のおじさんの姿で描かれたりすることが多い。
しかし、「シド」は作品によってプレイヤーの想像を超える、思いもよらない姿を見せることもあった。そこで今回は意外すぎる設定でプレイヤーの度肝を抜いた、特殊なシドたちを振り返ってみたい。
※本記事には各作品の内容を含みます。
■トホホ……な感じが哀愁漂う「愛妻家」
各シリーズのシドの職業は技術者や研究者が多いのだが、『FF8』では予想外の役職に就いていた。
同作は『FF』シリーズとしては珍しく学園を舞台にストーリーが展開される。ただし学園といっても「バラムガーデン」と呼ばれる魔女を討伐する兵士を養成する軍事学校で、その学園長として登場するのが「シド・クレイマー」だ。
外見はタレ目に丸メガネでやや恰幅の良い、いかにも温厚そうなおじさん。サイファーからはタヌキ呼ばわりされることもあった。
主人公・スコールを頻繁に学内放送で呼び出すことから登場回数も多い。そのたびに優しくていねいな言葉遣いで気にかけてくれる、一見すると理想の先生のような存在だった。
しかし、その彼の妻こそが世界の脅威となっている魔女イデアである。それゆえにシドは自身の妻の討伐を生徒たちに命じるという、つらい立場に置かれる。
魔女との決戦の際、シドは臆して現場から逃げ出すという情けない場面もあった。学園の生徒からするとたまったものではないが、肝心なところで生徒や愛する妻を失うのが耐えられなかった、ある意味人間らしい人物だったのである。
■ついに人間ですらなくなった…!?
見た目という意味でもっともインパクトがあったのが『FF9』の「シド・ファブール9世」ではないだろうか。
本作のシドは、作中の三大王国のひとつであるリンドブルム公国の大公で、街に行くと国民からも慕われているのがよく分かる人物だ。
いったいどれほど威厳のある姿で登場するのかと思いきや、なんと本作のシドは「ブリ虫」という昆虫の姿をしている。
しかもブリ虫は、現実世界で万人から嫌われているあの黒い虫がモチーフ。それに作中のブリ虫も、野菜を食い荒らす害虫として扱われていた。
そのブリ虫の姿をしたシド大公は一応立派な白いヒゲが生えていたり、気品のある衣装を着ていたりと、人間っぽさを残している。
もちろん本来の姿は人間であり、賊に襲撃を受けてこの姿になったと説明していたが、真相は違う。実はシドが酒場の女性に見とれていたことが原因で妻の怒りを買い、魔法でブリ虫の姿を変えられてしまったのである。
おまけに元の姿に戻す治療を試みるも今度はカエルの姿になってしまうという、まさにネタキャラ感が満載だった異色のシドだった。