
数万円から数十万円の値段がつくこともある「レトロゲーム」の世界。そんなソフトがズラリと揃う『ハードオフTOKYOラボ吉祥寺店』の店長にして、自身も大のゲームコレクターである大竹剛氏が、毎回1本のソフトを語るこの連載。今回、ショーケースに並ぶソフトの中から取り上げるのは——?
■『ドラクエ3』には裏技が使える特別バージョンが存在する

ハードオフ大竹店長の「レトロゲームちょっといい話」第12回
『ハードオフTOKYOラボ吉祥寺店』の店長、大竹剛です。今回はファミコンの大ヒット作、1988年に発売された『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』(エニックス)をご紹介します。当店では現在、箱と取扱説明書の付いた完品を5500円(税込)で販売中です。
たくさん売れた作品だけに、希少性はまったくありません。でも、そんな『ドラクエ3』にも、実はバージョン違いが存在するんです。どうやら4パターンあるようなのですが、ざっくり分けるとカートリッジがツルツルか、それともザラザラした加工がなされているか。お客さんの中には、箱を開けてそのあたりを確認したいという方もいらっしゃいます。
ツルツルのものは初期、ザラザラのものは後期に生産されたものだそうで、『ドラクエ3』以外のカセットでも似たようなケースがあります。
ただ、ザラザラした『ドラクエ3』のカセットの中には、さらに違うバージョンもあるんですね。裏に貼ってあるシールに「B」の文字が刻印されているものがそれで、「これはちょっと特別だ」と、コレクターの間で話題になったことがあります。
というのも、「B」のバージョンのみ、IIコントローラーのAボタンを押しっぱなしにしている間、フィールドで敵とエンカウントしないという裏技が使えるそうなんです。確かにすごく面白いですけど、エンカウントしないことにはレベルが上がりませんから、ボスはどうやって倒すんでしょうね(笑)。
当店の『ドラクエ3』は、バージョンの違いによる価格の差はありません。箱を開けてみたらザラザラの「B」バージョンが出てくる可能性もあります。ちなみに、オークションサイトなどでも、「B」バージョンだからといって、とくに高値で取り引きされているワケではなさそうです。
■バックアップデータ目当てで買っていくコレクターもいる!?
『ドラクエ3』は、バージョン違いを探すお客さんの他に、セーブデータ目当てで買っていく方もいます。このシリーズ3作目からバッテリーバックアップが搭載されましたから、セーブデータが残っている可能性があるんですよね。今はもう電池切れしているかもしれませんが……。
当店では、個人情報というわけでもないので、基本的にセーブデータは消さずにそのまま販売しています。最近では、中古カセットに残っているデータを楽しみにする方も多くて、「ROMガチャ」みたいな言い方をするコレクターの方もいるほど。
『ドラクエ3』の場合は、たとえば『ポケットモンスター』シリーズ(任天堂)のように貴重なポケモンのデータを引き当てるなんてことはありません。でも、単純に他人のセーブデータを見てみたいという気持ちは、なんとなくわかるんですよね(笑)。前の持ち主が当時、どんな名前でどこまでやり込んでいたのかなと、好奇心が湧くんだと思います。