■点字で語られる「こわかったのだ」にゾクリ…『ルビー・サファイア』おふれのせきしつ
『ポケットモンスター ルビー・サファイア(以下、『ルビサファ』)』の舞台であるホウエン地方には、点字が刻まれたモニュメントが各地に点在する。いわゆる「レジ系」と呼ばれる伝説のポケモンである、レジロック、レジアイス、レジスチルらと出会うための手順が書かれており、「手持ちの1番目にジーランス、最後にホエルオー」といえば、思い出せる人もいるだろう。
いくつかある点字のなかでも、「おふれのせきしつ」にある文章はとくに印象的だ。そこにはレジ系ポケモンを出現させる情報だけでなく、点字を遺した何者かの独白が綴られているのである。
「わたしたちわ この あなで くらし せいかつ し そして いきて きた」「すべてわ ぽけもんの おかげだ」
どうやら『金・銀』のアルフのいせきのように、この地にもかつてポケモンと共存していた古代人がいたようだ。おそらく、彼らが共に暮らしたのはレジ系の3体だろう。
だが、点字を読み続けると「だが わたしたちわ あの ぽけもんを とじこめた」と、なにやら不穏な展開に。さらに読み進めると、たったひと言……。
「こわかったのだ」
この言葉を読み解いた子どもの頃、背筋がゾクリとした覚えがある。点字を遺した人々は、レジ系ポケモンの強さを恐れてホウエン地方の各地に封印したらしい。点字の最後は“勇気ある者よ、扉を開け”という趣旨で締めくくられており、自分たちのおこないを後悔しているようにも読み取れる。
大昔のホウエン地方で、人々が「怖かった」と思うほどの恐ろしい事件が起こったのだろうか。その原因はポケモンにあったのか、それとも人間にあったのか。「おふれのせきしつ」に、その答えは書かれていない。
今回見てきた「意味深スポット」の真相の多くは、現在も謎に包まれたままである。ポケモンやしきをめぐるミュウとミュウツーの謎は、のちに映画やコミカライズでよく取り上げられてきたが、『赤・緑』の世界で何が起こったのかは発売から29年経った今も明かされていない。
筆者が思うに、ゲームにおける謎はすべて解き明かされなくてもいい。残された謎はプレイヤーにさまざまな想像をさせ、深く、そして長い余韻を胸に残す。その余白こそ、『ポケットモンスター』が20年以上にわたって愛され続ける原動力なのだろう。