
集英社が発行する雑誌『MEN’S NON-NO』は、昭和、平成、令和にかけて、若者から絶大な人気を得ている男性向けファッション誌だ。歴代モデルには阿部寛さんや竹野内豊さん、田辺誠一さんなどそうそうたる大物俳優が名を連ねており、現在も鈴鹿央士さんや中川大輔さん、野村康太さんなど、映画やドラマで目覚ましい活躍を見せるモデルがたくさん在籍している。
このように『MEN’S NON-NO』出身のモデルが、のちに芸能界において名高い俳優になるケースは珍しくない。
今回は俳優の登竜門とも称される『MEN’S NON-NO』出身の有名俳優たちに焦点を当て、彼らの原点であるデビュー作を振り返りたい。
※本記事には各作品の内容を含みます
■凛々しい雰囲気がぴったり『はいからさんが通る』阿部寛
『MEN’S NON-NO』の初代モデルとして活躍した阿部寛さんは、1987年の映画『はいからさんが通る』で俳優デビューを果たした。
本作は大和和紀さん原作の同名漫画を実写化した作品で、おてんばで天真爛漫な娘・“はいからさん”こと花村紅緒と、彼女の許婚である若き軍人・伊集院忍との恋を描いた青春物語だ。
本作でヒロインの紅緒を演じたのは、当時絶大な人気を誇っていたアイドル・南野陽子さん。そして、その相手役である伊集院忍に抜擢されたのが、阿部さんであった。
原作漫画の忍は、ドイツ人の母と日本人の父をもつ金髪の美少年という設定だ。本作で阿部さんは金髪にしてはいなかったが、彫りの深い顔立ちとその凛とした佇まいが、忍のイメージに見事に合っていた。
作中で阿部さんは、スーツや軍服など多くの衣装で登場する。長身でスタイル抜群の阿部さんがさまざまなファッションを着こなす姿は、今、見返しても惚れ惚れしてしまう。
本作が俳優デビューとなった阿部さん。現場では先輩出演者の柳沢慎吾さんや南野さんが阿部さんをからかい、食べきれないほどのお弁当を渡していたなど、朗らかなエピソードも残っている。
■クールな存在感を発揮した『君といた夏』大沢たかお
90年代に「メンノンモデル」として活躍した大沢たかおさん。当時はカメラの前で笑顔を見せることが苦手で、“怖い雰囲気のモデルだった”と、のちのインタビューで自ら語っている。
そんな彼が俳優デビューを飾ったのは、94年にフジテレビの月9枠で放送されたドラマ『君といた夏』だ。
本作はひょんなことから男女3人が同居することになった、若者たちの恋愛と友情を描いた青春群像劇だ。このドラマで大沢さんはヒロインの佐野朝美(瀬戸朝香さん)の元恋人・相沢涼一を演じている。
涼一は元暴走族という設定もあり、時に粗暴な態度でヒロインのことを騙すシーンもある。
そのミステリアスでちょっと怖い雰囲気は、モデル時代に培われた笑わないポージングが役立ったのかもしれない。一方で、役柄の複雑な内面も表現しており、俳優として確かな存在感を残した。
この作品をきっかけに俳優として頭角を現した大沢さんは『星の金貨』(日本テレビ系)や『JIN-仁-』(TBS系)など、立て続けにヒット作に出演。今や日本を代表する実力派俳優の1人として、確固たる地位を築いている。