実はトラウマの宝庫…!? 昭和「メルヘンアニメ」ほのぼの世界が一変した“残酷描写”の画像
DVD『昆虫物語 みなしごハッチ』(東芝デジタルフロンティア) (C)タツノコプロ

 昭和の時代、さまざまなメルヘンチックなテレビアニメが放送され、当時の子どもたちを楽しませてくれた。

 たとえば、今でいう「ニチアサキッズタイム」に放送されていた『とんがり帽子のメモル』(1984年放送開始)は、童話のような愛らしい絵柄であると同時に、小さな妖精のような姿をしたメモルたちは「リルル星人」という宇宙人設定がロマンチックだった。

 また同じ枠で放送された『メイプルタウン物語』(1986年放送開始)は、森に囲まれたのどかな町「メイプルタウン」を舞台に、ウサギの少女パティをはじめとする動物たちの日常を描いた愛らしい物語である。

 このような昭和のメルヘンアニメには、道徳的な要素も含まれ、親も安心して子どもたちに見せることのできた作品が多い。

 ところが、メルヘンアニメの中にはとんでもない恐怖描写やショックな表現があった作品もあり、ほのぼのとした雰囲気から一転、奈落の底へ突き落とすようなシーンも存在した。

 そこで今回は、そんな「昭和メルヘンアニメ」に描かれたトラウマ級の恐怖シーンをピックアップして振り返ってみたい。

※本記事には作品の核心部分の内容を含みます。

■空っぽの殻にゾクッ! 小さな視点で描かれた恐怖

 1970年から放送が開始された『昆虫物語 みなしごハッチ』は、ミツバチの少年「ハッチ」が主人公。厳しい自然界で離れ離れになってしまった本当の母親を探す旅に出る冒険ファンタジー作品だ。

 可愛らしくデフォルメされた虫たちが描かれたメルヘンチックな作品ではあるが、健気なハッチがひどい仕打ちを受けるシーンも多い。そのたびに胸を痛め、涙することもあったが、あまりの恐怖にゾッとするようなエピソードもあった。

 特に筆者が印象的だったのが、第47話「牧場の城」の回だ。

 旅の途中、クロヤマアリの少年ピーターと出会ったハッチ。ふたりが一緒にいたとき、天敵であるマイマイカブリに襲われていたカタツムリのおじさんを助ける。

 その後、ピーターの家はアカヤマアリに襲撃され、父親は殺されてしまったことを知る。そのうえ繭に入った弟や妹たちまで奴隷としてさらわれていたのだ。

 ピーターの家族を襲った悲劇を知ったカタツムリのおじさんは、「自然じゃよ、自然の決まりじゃ。強い者が弱い者を虐めるのは」と、暗に諦めるように説いた。

 しかし、ハッチとピーターは力を手に入れるために武器を持って戦いの練習をする。それを見たピーターの母親は、「たとえどんなことがあっても暴力は嫌いなの」ととがめる。

 なんとかしてアカヤマアリと戦いたいハッチは、カタツムリのおじさんに相談するが「それは無理だ」と反対される。だが物知りのおじさんがアリの弱点は泳げないことだと教えると、ハッチとピーターは家の周りに掘を作ることを思いついた。

 努力の末、家を囲むように堀が完成。そのことを知らせるため、意気揚々とカタツムリのおじさんのもとに向かう。だが、そこで悲劇が訪れる。ハッチの目の前にマイマイカブリが現れ、その口元には何かを食べたあとが……。

 あわてて先を急ぐハッチが目にしたのは、中身が空っぽになったカタツムリの殻だった。この描写でおじさんの身に何が起こったのかを察したとき、思わずゾッとした。

 その後、現れたアカヤマアリの大群はハッチたちの作った堀をものともせず、結局ピーターの家は襲われてしまう。圧倒的な強者に大量のサナギを奪われ、手も足も出せないハッチたちの無力さは見ていてツラかった。

 アカヤマアリが去り、絶望する二人だったが、ピーターの母親は小さな隠し部屋にサナギを半分かくまっていたことを明かす。さらに自分たちのような弱者が生き残る方法は暴力ではないと諭す。そして「敵が100のサナギを奪っていくのなら、私は200の卵を生みましょう」と力強く語るのだ。

 物知りなカタツムリのおじさんのトラウマシーンが忘れられないエピソードであると同時に、弱い生き物のたくましさを見せつけられたエピソードでもある。

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