■「アザ」が出ていないのに上弦とやりあった煉獄

 そして劇場版『無限列車編』は上映時間残り35分のところで、ついに猗窩座が登場する。猗窩座が真っ先に、弱いと判断した炭治郎を狙ったところを「炎の呼吸 弐ノ型 昇り炎天」で防いでみせたが、本来ならここで煉獄が守っていなければ炭治郎は死んでいたというのも注目すべきポイントだ。

 猗窩座も煉獄の強さを瞬時に見抜き、戦う前から「鬼にならないか」と彼の強さを評価していた。見えないほどの速さの攻防が続き、両者互角に戦っていたのが印象的だが、このときの煉獄には、後に柱たちに発現することとなる、身体能力を飛躍的に向上させる「アザ」が出ていないのにこれほど強かったということも忘れないでおきたい。

 さて、猗窩座の強さは本人も言う通り、数100年単位で行われた鍛錬によるものだろう。一方の煉獄は20歳の人間の肉体。その二人が互角に渡り合っていたと思うと並外れた強さがわかりやすい。

 そもそも無限城での炭治郎には、少しとはいえ『無限列車編』で出会った猗窩座の情報があった。どんな戦い方をするのかなど、何もわからない相手にこの戦い方ができたのは、柱の中でも特に「判断が早い」煉獄の優秀さゆえではないだろうか。

 そして、極め付きが内臓が傷ついてあばらが折れていてもなお繰り出された「炎の呼吸 玖ノ型 煉獄」だ。腹に穴が空いても敵の首を狙い続ける胆力たるや……。猗窩座は結局、夜明けによって逃げ出すしかなかった。

 煉獄の強さとは、そのまっすぐな性格から戦いの強さばかりが注目されがちだが、精神の強さ、芯のぶれなさ、冷静な判断力も評価されるべきポイントだ。そして、後進をしっかりと守り、その遺志を継がせたのもよほどの人格者にしかできないことだろう。

 そんな煉獄ですら勝てなかった猗窩座に炭治郎・冨岡の2人がどう挑んだのか。劇場でまだ体感していない人にはぜひその目で見届けてほしい。

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