
1966年放送の『ウルトラQ』から始まった昭和『ウルトラマン』シリーズでは、さまざまな個性を持った怪獣や宇宙人が地球に姿を現し、ウルトラマンが立ち向かう。
ただし、長いシリーズの中で描かれたエピソードは、何も勇壮な物語ばかりではない。時には、観る者をゾッとさせる「怖い」エピソードも描かれた。
たとえば『帰ってきたウルトラマン』では「冬の怪奇シリーズ」と銘打ったエピソードが放送。『ウルトラマンA』では、夏と冬に「怪奇シリーズ」があり、『ウルトラマンレオ』では「恐怖の円盤生物シリーズ!」というホラーテイストあふれるエピソードが放送されている。
そこで今回は、当時の子どもだけでなく大人までもが背筋が凍るような恐ろしい物語をピックアップ。恐怖に満ちたこれらのエピソードを最後まで見届けることができただろうか。
※本記事には各作品の内容を含みます。
■静かに迫る黒い影…謎の宇宙人に操られた不気味な存在の正体は!?
最初に紹介するのは1968年に放送された『ウルトラセブン』の第33話「侵略する死者たち」の回だ。
世界中の防衛軍秘密基地の情報が収められたマイクロフィルムが、ウルトラ警備隊の拠点のある極東基地に運ばれてくる。時を同じくして、極東基地周辺で謎の事故が多発。ただし、事故の被害者は全員が身元不明で、なぜかホルマリンの臭いを発していた。
ウルトラ警備隊の調査により、事故の被害者は病院から盗まれた解剖用の死体だと判明。基地内に運び込まれた死体を調べなおしてみるものの、怪しいところは見つからない。しかし、夜中になると死体を安置していた監視室で黒い影がうごめき始める……。
誰もいないはずなのに、なぜか開く自動ドア。壁や床に映る黒い影。さらに、安置された死体から次々と薄い影のような霊魂が浮き上がっていくさまや、白いモヤとともにゆっくりと迫ってくる幽霊のような姿は不気味そのもの。
実はその正体は、地球侵略を目論む謎の宇宙人によって操られた蘇生怪人「シャドウマン」だった。その目的は機密情報が入ったマイクロフィルムの強奪で、霊魂のようなシャドウマンは3万ボルトの高圧電流で守られた鉄格子もやすやすと突破し、首尾よくマイクロフィルムを盗み出す。
ウルトラ警備隊が奪われたマイクロフィルムの奪還に乗り出すあたりから物語は急展開を見せるが、それまではむしろ淡々と描かれていることもあって、不気味なシャドウマンに対する恐怖が倍増。オカルトチックな雰囲気にゾッとさせられたエピソードだ。
■血を求めてさまよう謎の少女…その裏に潜む黒幕の目的は…!?
続いて紹介するのは1971年放送の『帰ってきたウルトラマン』の第36話「夜を蹴ちらせ」の回だ。
鈴村みどりの妹・みちこを名乗る少女が、みどりの知人の女性の家に潜り込む。実はみちこの体から怪電波が検知されたことでMATが目をつけていたが、その尾行を振りきって女性のもとを訪れていた。
その夜、ふと起き上がったみちこは目を見開いて、隣で寝ている女性を凝視。その直後にその女性の叫び声が響きわたる。女性は血を吸われて殺害されたのだが、叫び声をあげる直前に映るみちこの目がとにかく怖い。
その後、警視庁から依頼があり、MATは本格的に吸血殺人事件の調査を開始。みちこは別荘地で知り合った女性の家を訪ねていることが判明する。
そこから別荘地で亡くなった少女の死体が、宇宙人に利用されているのではないかとMATは推測。続く調査で、防腐処置を施して保存されていた鈴村みどりの死体が盗まれていたことが発覚する。その直後、まるで口裂け女のような姿をしたみどりが出現。しかし、みどりは父親の呼びかけにも答えず、姿を消してしまう。
その後、みどりの死体を操っていた吸血宇宙星人ドラキュラスが、地球の女性を殺し、人類絶滅を目指していたことが判明。MATとの攻防が始まるが、その戦いの最中にもドラキュラスはみどりの姿を利用して父親を幻惑した。
さらには噛みついたドラキュラスの牙がウルトラマンジャックの肩にめり込んでいくショッキングなシーンもあり、最後までホラーテイストあふれる恐ろしいエピソードだった。