■同時上映されたのは姉妹が登場する名作

 当時、アニメ映画と言えば、2つの作品がセットで上映される「同時上映」というパターンも非常に多かった。かくいう『火垂るの墓』もまた、今や誰しもが知る超有名ジブリ作品と同時上映された作品である。

 その作品とは、子どもから大人まで幅広い層から絶大な人気を誇る『となりのトトロ』だ。田舎に引っ越してきた姉妹のサツキとメイが、森のなかに住む不思議な生きもの・トトロと出会う、心温まるファンタジー作品である。

 今となってはジブリを代表する名作アニメ映画だが、実は当初、企画を受けた製作会社から難色を示されたという。そこで急遽、同時上映作として『火垂るの墓』を打ち出したのだが、「お化けに墓までくっつけるのか!」と、さらに大変な事態になったことをプロデューサーの鈴木敏夫さんがのちに語っている。

 現在は国民的な人気を誇る2作品が、公開当時、このような苦境にあったという事実にも驚かされてしまうエピソードである。

 

 サブスクで解禁されたことでより多くの人々の目に触れ、令和の現代にあらためて戦争の悲惨さ、虚しさを視聴者に問いかける『火垂るの墓』。

 繊細かつリアルなアニメーション表現はもちろん、タイトルやポスターのイラストに隠されたメッセージ、知る人ぞ知る制作秘話と、掘り下げるほどさまざまな要素が見えてくる、実に味わい深い作品だ。

 まさに後世へと語り継がれるべき、日本のアニメーション史に残る珠玉の名作のひとつと言えるだろう。

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