
6月まで放送された『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』は、新規の『ガンダム』ファンを数多く生み出した。とくに10代から20代の『ガンダム』シリーズを観たことがない世代からも『ジークアクス』は多くの支持を集め、同作をきっかけに、初代ガンダムこと『機動戦士ガンダム』を観始める人も増えているようだ。
しかし、そんな『機動戦士ガンダム』初見の人に立ちはだかる壁がある。全43話の「テレビアニメ版」(以下テレビ版)と、それを3本の映画に再構成した「劇場版三部作(以下、劇場版)」の「どちらを観るべきか?」という問題だ。
タイパで考えるなら、合計7時間程度で観終わる劇場版のほうが優れており、メインとなるストーリーも押さえられる。「まずは劇場版から観るべき」と薦める往年のファンも多く、筆者も時間がないなら劇場版の鑑賞から入ってほしいと思う。
ただし、劇場版にはテレビ版に存在しない要素も数多く存在する。そこで今回は「テレビ版」と「劇場版」の大きな違いを紹介。『ジークアクス』のファンも、ぜひ参考にしてほしい。
※本記事には作品の核心部分の内容を含みます。
■シャリア・ブルが登場しない? キャラの顛末が大きく異なる
劇場版では、テレビ版から大きく扱いが変わったキャラクターが存在する。たとえばジオン公国軍のマ・クベ大佐もそのひとりだ。
テレビ版の第37話で、マ・クベはガンダムとの激闘の末に壮絶な最期を迎える。しかし、劇場版ではガンダムとの対決そのものがカットされた関係で生死は不明。一年戦争を生き延びた可能性も考えられる。
「俺を踏み台にしたぁ!?」のセリフでおなじみのジオンのエース部隊「黒い三連星」は、テレビ版だとガンダムと二度の戦いを繰り広げるが、劇場版では一度の戦いで3人まとめて倒され、出番が減少した。
もっとも不遇なのが、『ジークアクス』では“緑のおじさん”の愛称で親しまれたシャリア・ブルだ。『ジークアクス』をきっかけに『ガンダム』に興味を持ったファンなら、シャリア・ブルの活躍シーンを観てみたいと思うことだろう。
だが残念ながら、劇場版ではシャリア・ブルの存在自体がカットされている。テレビ版では第39話でアムロ・レイを苦しめる強敵として登場するが、劇場版では影もかたちもないのだ。
ちなみに『ジークアクス』の鶴巻和哉監督とシリーズ構成の榎戸洋司氏は、20年以上前から「シャリア・ブルでリメイクを作ったら面白い」と2人で語り合うほどシャリア・ブルがお気に入りだったらしい。
『ジークアクス』でのシャリア・ブルの人気ぶりを観ると、劇場版では出番すらなかった男に早くから目をつけていたお二方の見識に驚くばかりだ。
■『ジークアクス』で大活躍のギャンも登場せず!?
ジオン軍といえば、ザクIIやグフといったMS(モビルスーツ)から、ビグ・ザムのようなMA(モビルアーマー)まで多種多様な機体を開発したのが特徴。しかし、劇場版では個性的で人気だった機体も省略されている。
キシリア・ザビとマ・クベが同時に搭乗したMAの原型ともいわれるアッザム、黄色いボディに大きな目と口、カマキリのような腕が個性的すぎるザクレロ、そしてシャリア・ブルの愛機だったブラウ・ブロなど、ガンダムファンなら知っていて当然の機体たちが劇場版には登場しないのだ。
いずれも劇場版ではテレビ版での登場エピソード自体がカットされており、その影響を受けてしまった。
『ジークアクス』ファンにとって衝撃なのが、エグザベ・オリベの搭乗機として活躍したギャンが劇場版に登場しないことだろう。初代ガンダムにおいてギャンはマ・クベの愛機なのだが、先述の通り、マ・クベがガンダムと戦うエピソード自体がなくなったため、その余波でギャンも登場しない。
初代ガンダムに登場するすべての機体をどうしても観たい人は、劇場版ではなくテレビ版のほうでチェックすることをお薦めしたい。