宇宙世紀『ガンダム』の最弱兵器…!? 「絶対乗りたくないメカ」筆頭候補が挙げた“奇跡の戦果”とは?の画像
「MG 1/100 ボール Ver.Ka」(BANDAI SPIRITS) (C)創通エージェンシー・サンライズ

 「ボール」と聞いて、皆さんは何を思い浮かべるだろうか。多くの人は、自分の好きなスポーツに使用される球形の道具を連想するかもしれない。

 しかし『機動戦士ガンダム』を長年観てきたファンなら、同名のメカを思い浮かべる人も多いはずだ。『ガンダム』における「ボール」とは、地球連邦軍が開発した宇宙用作業ポッドのこと。一年戦争時には兵器としても転用され、主にジムを支援する役割を担った。

 単にボールといっても実は複数のバリエーションがあり、作品ごとにさまざまな運用シーンが描かれている。そこで今回は『ガンダム』作品にて、とくに印象に残ったボールの活躍シーンを振り返ってみたい。

※本記事には各作品の内容を含みます。

■連邦の「やられ役」の象徴だった「ボール」

 まずはテレビアニメ『機動戦士ガンダム』に登場した「ボール(RB-79)」から紹介したい。主にその姿は、物語後半のソロモン要塞攻略戦やア・バオア・クー最終決戦で見られた。

 公式設定として「簡易モビルスーツ」と呼ばれることもあるが、もともと作業用ポッドだったものを改良して大量生産されたメカであり、「戦闘ポッド」「モビルポッド」と呼ぶのがしっくりくる。

 その見た目はボールの名にふさわしい球形で、簡素な腕とキャノン砲を乗せただけのシンプルな構造。それゆえに、連邦のパイロットからも「丸い棺桶」や「1つ目のマト」などと揶揄されていた。

 実際、劇中の描写でもソロモン要塞内に侵入したジムとボールの小隊が、ジオンのモビルアーマー「ビグ・ザム」のメガ粒子砲によって一網打尽にされるシーンが忘れられない。

 続くア・バオア・クー攻略戦では、ジオンのザクIIによりサッカーボールのように蹴り飛ばされたボールが、ジムに直撃するという悲惨なシーンも描かれていた。

 そんな「やられ役」としてのイメージが強いボールだが、同大戦においてその存在は侮れない。ボールの生産コストはジムの4分の1以下であり、シンプルな構造だけに短期間での大量生産を実現させた。

 そして主武装は頭上にある180mm低反動キャノン砲1門だけだが、長射程からの砲撃は対艦戦でも活躍。モビルスーツに直撃した場合、ザクIIやリック・ドム程度であれば1発で撃破するほどの威力を誇った。ボールによる物量作戦は、人員も物資も枯渇気味だった戦争末期のジオンにとって、やっかい極まりなかっただろう。

 しかし、ある程度被害が出るのを見越した物量作戦は、ともすれば人命軽視のようにも見える。アニメ『ガンダム』でのボールの扱いを観ていた視聴者ならば、「あれに乗ってみたい」などと思えなかったはずだ。

■奇跡のジャイアントキリングを起こした「ボールK型」

 アニメ本編でボールが目立った戦果を挙げた描写は少ないが、外伝作品には奇跡的な善戦をみせたボールも存在する。それはOVA『機動戦士ガンダム第08MS小隊』の第1話に登場した「ボールK型(RB-79K)」だ。

 地球に向かうシャトルの中で主人公シロー・アマダは、「先行量産型ジム」と「高機動試験型ザク」の交戦シーンを目撃する。友軍のジムが劣勢に立たされているのを知ったシローは、シャトルに搭載されていたボールK型で出撃した。

 支援用のボールK型に搭載されていた武装は、2連装機銃「フィフティーン・キャリバー」のみ。シローは宇宙空間に漂うデブリに身を隠しながらザクへと近づき、作業用のワイヤーを射出。ザクを拘束すると、ボールで接近戦を挑んだ。

 そして、ほぼゼロ距離からフィフティーン・キャリバーを放つと、ザクとボールは相討ちになり、両機は爆散する。

 本来なら1対1では絶対にかなわない圧倒的な性能差があったが、ボールK型に乗ったシローの巧みな戦術で相打ちまで持っていった。いつもやられ役のボールが輝いた、貴重な活躍シーンである。

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