「全然ハッピーじゃない…」昭和ロボットアニメ「意味深すぎる最終回」 不穏演出にバッドエンド示唆も…の画像
「新造人間キャシャーン ブルーレイBOX<5枚組>」(松竹) (C)タツノコプロ

 日本初の「国産ロボットアニメ」といえば、手塚治虫氏によるSF漫画を題材にした『鉄腕アトム』だ。1963年(昭和38年)から約4年間、全193話がテレビ放映され、1話30分の連続アニメとしても日本最初の作品である。

 21世紀の未来を舞台に、10万馬力のパワーを誇る心優しいロボット「アトム」が活躍。当時の子どもたちにとって憧れのヒーローとなった。だが、そんなアトムのアニメ第1作目の「最終回」は、あまりにも衝撃的な結末を迎える。

 1966年の大晦日に放送された最終回「地球最大の冒険」でアトムは、地球を守るために太陽に向かって単独で突入。それにより地球は救われたが、アトムが帰還することはなく、多くの視聴者はヒーローの死を受け止められなかった。

 そんな『鉄腕アトム』以降も、衝撃的な最終回が描かれたロボットアニメは存在した。世界各地が大波に飲まれ、地球側の敗北ともいえる結末だった『宇宙戦士バルディオス』、全人類が全滅した『伝説巨神イデオン』など、ファンを驚かせた最終回は案外多い。

 そこで今回は、さまざまな解釈の余地を残した「意味深な終わり方」だった作品に注目。とてもハッピーエンドとは思えなかった昭和ロボットアニメの最終回を振り返りたい。

※本記事には各作品の核心部分の内容を含みます。

■元に戻れない主人公…最後に登場したロボットの意味とは?(新造人間キャシャーン)

 1973年から74年にかけて放送された『新造人間キャシャーン』。いわゆるマシンに乗り込むタイプのロボットアニメとは異なるが、人類が生み出したロボットたちの反乱をテーマに描かれた個性的な作品である。

 東光太郎博士が、公害を処理するために開発したロボット「BK-1(ブライキング・ボス)」が突如自我に目覚め、戦闘ロボットを量産して「アンドロ軍団」を創設。公害の元凶である人類を処理すべく世界征服に乗り出す。

 東博士の息子・鉄也は、父の手で機械と人間を融合させた「新造人間」キャシャーンへと生まれ変わり、ロボット犬のブレンダーや、幼なじみの上月ルナとともに、アンドロ軍団に立ち向かう物語だ。

 人類を守るために戦うキャシャーンだが、物語の途中で彼が「新造人間」であることが分かると、疎外する人間まで現れる。

 その最終回(第35話)「地球最大の決戦」は、まさに不遇なヒーローの真骨頂であった。捕らわれていた東博士を救出したキャシャーンは、ブライキング・ボスと世界の命運をかけた最後の戦いに挑む。

 しかし、東博士が各地に配置していたレーザーによりアンドロ軍団は一気に壊滅。そのレーザーから逃れたブライキング・ボスは、キャシャーンの放った「破壊光線」で倒れ、それまでの苦戦がウソのようにあっけない幕切れを迎える。

 その後、白鳥ロボット「スワニー」に生体データを記録されていた鉄也の母は、無事に人間の姿に戻る。しかし、最大の功労者であるキャシャーン(鉄也)は、ロボットではなく、機械と融合した新造人間のため、現在の科学力では人間に戻れないのである。それでも、いつか父親が人間に戻してくれると信じるキャシャーンが気の毒でならなかった。

 アンドロ軍団に破壊された街の復興が始まり、キャシャーンとルナは1体のロボットを見て、「どこかで見たことのある顔だな」と大笑いする。そのロボットは、さんざん人間を苦しめたブライキング・ボスにそっくりだったのである。

 アンドロ軍団を率いたブライキング・ボスに似たロボットが意味深に描かれ、新造人間であるキャシャーンに対してマイナスな感情を抱いた人間も残されたまま。キャシャーンやその周辺に本当の平和が訪れるのか、どうしても気になってしまう終わり方だった。

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4