■多大な犠牲の末に勝利した英雄を地球人はどう迎えるのか(無敵超人ザンボット3)
1977年から78年にかけて放映された『無敵超人ザンボット3』の最終回では、真の正義とは何かについて考えさせられた。
主人公の神勝平をはじめとする一族は、ビアル星人の子孫である。宇宙の破壊者「ガイゾック」によって母星ビアルを滅ぼされ、神ファミリーの先祖は地球へと移住したのだった。
さらに地球にまで襲来した「ガイゾック」は、殺戮ロボット兵器「メカ・ブースト」を地球に送り込み、勝平たち神ファミリーは、先祖が遺した巨大ロボ・ザンボット3で地球を守ろうとする。
いわば神ファミリーは異星難民の子孫で、彼らにとって地球は第二の故郷。その地球をガイゾックの魔の手から守るため、命がけで地球人の盾となり戦った。
しかし、地球の人々は「神ファミリーがいるから地球が攻撃されるのでは」「彼らこそがガイゾックの手先ではないか」と疑心暗鬼に陥り、迫害する者まで現れる。
それでも地球のため、宇宙を舞台に戦う神ファミリー。最終回(第23話)「燃える宇宙」では、勝平とともにザンボット3を操縦していた神江宇宙太と神北恵子の二人が、敵艦に向かって特攻。中学生の若さで命を散らせた。
その後も愛犬・千代錦や宇宙船ビアルI世の乗組員など、ともに戦ってきた仲間たちが次々犠牲になっていくのである。
そして勝平は、ようやくガイゾックの本体までたどり着く。その正体はただのコンピュータにすぎず、悪い考えを持った生物に反応するよう作られていた。
かつて悪い考えに満ちたビアル星を滅ぼし、その後「仲間同士で憎しみあい、殺し合う」地球を滅ぼすために動いていたことが判明する。
勝平は、地球人は良い人ばかりだと反論するが、ガイゾックは「お前たちは勝利者となった。しかし、お前たちを優しく迎えてくれる地球の生き物がいるはずがない」「この悪意に満ちた地球に、お前たちの行動を分かってくれる生き物が1匹でもいるというのか」と問いかけた。
そしてガイゾックを倒した勝平は、仲間たちの献身的な助力を得て、なんとか地球に帰還を果たす。勝平の生還を喜ぶ神ファミリーの顔は笑顔に満ち、物語は大団円を迎えた。
こうして地球に平和は訪れたが、もともと宇宙人であり大きな力を持つ神ファミリーを、地球人がすんなり受け入れるかは分からない。なによりガイゾックのコンピュータが言い残した「お前たちを優しく迎えてくれる地球の生き物がいるはずがない」という呪いのような言葉が忘れられなかった。