■痛々しいまでの“ナンバー1”への執着『闇金ウシジマくん Part2』窪田正孝
真鍋昌平さんによる人気漫画を原作に、非情な金と欲望の世界を描いた『闇金ウシジマくん』シリーズ。その2014年公開の劇場版第2作『闇金ウシジマくん Part2』で、窪田正孝さんが演じたのは、歌舞伎町のホストクラブ「クラブエアー」で働く新人ホスト・神咲麗である。
ホスト歴はわずか3カ月。指名もほとんど取れず、黒いスーツ姿もどこかぎこちない。演じる窪田さんも「ホスト役ということは、あまり意識しないようにした」と明かしていたが、そのストレートな演技がかえって新人ホストとしてのリアリティを高めていた。
しかし、母親の自殺をきっかえに、彼は“ナンバー1”を目指し、激しく突き進み始める。太客の女性と一夜をともにし、さらには中卒のフリーター・藤枝彩香(門脇麦さん)には「夢を叶えさせてほしい」と懇願。彩香は体を売ってまで資金を用意し、彼の背中を押そうとする。
作中で山田孝之さん演じる丑嶋馨の「ホストは客だけじゃなく自分自身も騙さなきゃやってけねぇ商売だ。自分のウソの重みに耐え切れねぇで潰されなきゃいいけどな」というセリフは、まさに神咲麗というホストの末路を予言するようなひと言になってしまうのだった。
純粋で、野心的で、どこまでもまっすぐだったがゆえに壊れていった神咲麗。その痛ましさを、窪田さんは体当たりの演技で見事に表現していた。彼のナイーブな目の奥に宿る“信じたかったもの”こそ、この役の本質だったのかもしれない。
「ホスト」という虚構の職業を通して描かれるのは、むしろ人間の本質である。今回取り上げた俳優たちは「人間の弱さ」「歪んだ愛情」「壊れそうな情熱」までも、リアルに、そして痛烈に浮かび上がらせていた。
次にこの難役に挑むのは誰か。そしてどんな「人間ドラマ」がそこに生まれるのか。また新たな熱演に、私たちは心を揺さぶられるに違いない。