■主人公の成長を促した「かけがえのない存在」

 最後に紹介するのはOVA『機動戦士ガンダムUC』に登場する「マリーダ・クルス」。『ガンダムUC』を観た人の多くは、彼女の壮絶な生きざまに衝撃を受けたことだろう。

 彼女の生い立ちは『機動戦士ガンダムZZ』の時代まで遡る。実はマリーダは、ニュータイプ「エルピー・プル」をモデルとしたクローン強化人間「プルシリーズ」の12番目の個体である。

 本当の名前は「プルトゥエルブ」。第一次ネオ・ジオン戦争の終盤、グレミー・トトをマスターとする彼女たちプルシリーズは、次々と戦場に散っていく。しかし、プルトゥエルブだけは生き残り、地球に逃げ延びた。

 しかし彼女は悪質な人身売買業者に捕まり、娼館に売られるという悲惨な運命が待ち受けていたのである。

 その後スベロア・ジンネマンに救出され、彼の亡き娘の名をもらって「マリーダ」として人生を送ることとなる。

 『ガンダムUC』では、ジンネマンが船長を務めるネオ・ジオンの残党の貨物船ガランシェールに乗り、ニュータイプ専用モビルスーツ「クシャトリヤ」に搭乗した。

 『ガンダムUC』の主人公、バナージ・リンクスとは敵として対峙する場面もあったが、時に彼女はバナージを導く存在として重要な役割を担う。まだ18歳の女性ながら幾多もの苦難を乗り越えてきたマリーダの言葉は、バナージの背中を押し続けた。

 「バナージ、たとえどんな現実を突きつけられても『それでも』と言い続けろ。自分を見失うな。それがお前の根っこ……」。

 このマリーダの言葉はバナージの信念を象徴する言葉となり、さまざまな場面で彼は「それでも」と言い続ける。

 そしてマリーダは、バンシィ・ノルンのNT-Dに呑み込まれ、強烈な憎しみに支配されたリディ・マーセナスを救うために自らの命を差し出す。彼女の魂はリディだけでなく、彼女に関わったすべての人たちに語りかけていった。

 バナージの成長に大きく寄与したマリーダは、視聴者にとっても決して忘れられない存在になったのではないだろうか。

 

 今回紹介した3名の女性たちは、ただ強いというだけでなく、ふとした場面で人間味のあるところも見せてくれた。悲しい過去を持ち、時には弱い部分も見せた彼女たちだからこそ、視聴者は感情移入し、ある意味メインヒロイン以上に愛されているのかもしれない。

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