
長い歴史のある『ガンダム』シリーズには、実にさまざまなキャラクターが登場する。中でも注目を集めやすいのが、モビルスーツなどに搭乗して戦うパイロットたちではないだろうか。
優秀なパイロットが繰り広げる戦闘シーンは印象に残りやすく、その中では女性の活躍も目立つ。強化人間やニュータイプにはメンタルが不安定な面も見受けられるが、強さが際立つたくましい女性も少なくない。
そこで今回は主人公と対峙する場面もありながら、作品のヒロイン並み、いやそれ以上の人気を誇っている珍しい女性パイロットたちについて振り返ってみたい。
※本記事には作品の核心部分の内容を含みます。
■未練が隠しきれない不器用な女帝
まず紹介したいのはアニメ『機動戦士Zガンダム』や、その続編の『機動戦士ガンダムZZ』に登場する「ハマーン・カーン」だ。ガンダム界の女傑といえば、彼女を思い浮かべる人も多いのではないだろうか。
ハマーンはジオン公国の高官「マハラジャ・カーン」の次女に生まれ、ニュータイプとして高い適正を示したことでジオンのニュータイプ研究機関で過ごす。
ジオンが一年戦争に敗れると、ハマーンの父・マハラジャはミネバ・ラオ・ザビらを連れて小惑星アクシズに逃げ込む。そこでジオンの残党の指導者となるが、0083年に病死した。
父マハラジャの死後、心惹かれるシャア・アズナブルの推挙もあって、当時17歳の少女だったハマーンはアクシズの実質的な指導者となる。ミネバの摂政としてザビ家の再興を進めるが、意見の食い違いもあり、心の支えだったシャアと決別することになった。
そして『機動戦士Zガンダム』で描かれたグリプス戦役ではエゥーゴについたシャア(クワトロ・バジーナ)に対し、傲慢にも映る言動を見せる。しかし、シャアへのハマーンの言葉の節々からは、彼に対する未練のようなものが見え隠れしていた。
続く『機動戦士ガンダムZZ』の時代になると、ハマーン率いるアクシズはネオ・ジオンと名を変えて勢力を拡大。第一次ネオ・ジオン抗争へと突入する。
ダブリンへのコロニー落としを敢行し、地球連邦政府からサイド3を譲渡させるなど、ネオ・ジオンは順調に勢力を伸ばしつつあったが、部下のグレミー・トトの裏切りにより内乱が勃発。その戦いのなかでハマーンは、ニュータイプの少年「ジュドー・アーシタ」との一騎討ちに敗れ、彼の救いの手を拒んで愛機キュベレイとともに命を散らせた。
パイロットとして秀でた技量を持ち、ニュータイプ能力も超一流。さらに多くの者を従えるカリスマ性まで兼ね備えた女傑だったハマーン。強くたくましい「鉄の女」といった印象もあるが、シャアに対して隠しきれずに見せた言動などからは、人間らしい弱さも感じ取れた。