■巨大な鉄球を一撃で粉砕「辵家核砕孔(ちゃくけかくさいこう)」
男塾三面拳の一人である月光は、民明書房に登場する多くの技を扱う。中でも読者にインパクトを残したのが、巨大な鉄球を一撃で粉砕した「辵家核砕孔(ちゃくけかくさいこう)」だ。
大威震八連制覇編にて最終決闘場へ向かうべく、塔の上を目指す男塾一行。しかし突然塔上から巨大な鉄球が転がってきて、一行はその鉄球を受け止めるのに精一杯で前に進めない。そこに登場した月光は一人鉄球の前に立ちふさがり、巨大鉄球の一番弱い箇所を見極め、一撃で鉄球を粉砕するのであった。
民明書房によるとこの技は“分子核構造その理論”として紹介されており、どのような物体でも核である“ブルッツフォン・ポイント”を見極めれば一撃で破壊できると紹介されている。当時の子どもたちは皆、この理論的かつ実証的な解説を信じてしまったに違いない。
■胸に「闘」の文字を刻んで激励する「血闘援(けっとうえん)」
最後は、“これぞ男塾!”といえる、情熱的な民明書房の解説を紹介したい。
「大威震八連制覇編」にて飛燕とタッグを組み戦いに挑んだ富樫源次。先に戦った飛燕が独眼鉄から首を絞められピンチに陥る。
そこで富樫が取った行動が、自分の胸に刀で「闘」の文字を刻んで応援するという「血闘援」だ。民明書房によると血闘援は江戸時代からあり、御前試合などで仲間を応援する際、胸に「闘」の字を刻み必勝を祈願する応援の至極だという。
あえて自分の胸に一生消えない「闘」の文字を刻み、痛みに耐えつつ仲間を応援するなんて男塾の塾生でしかできないだろう。しかも難しい漢字を鏡も見ないでその場にて一瞬で彫れる富樫の技術にも脱帽だ。
まさしく命がけの応援をした富樫の行動に応えるかのように、その後、飛燕は見事に復活するのであった。
『魁!!男塾』にはこの他にも多くの民明書房の解説が登場し、今読み返すとどの歴史や武術も現実にはありえないものが多い。しかし激しい戦いの最中に難しい漢字をたくさん並べた説得力のある民明書房の解説が入ると「昔の人はこんなに苦しい修行を積んだのか……」と、素直に信じてしまうのである。
荒唐無稽な戦いや歴史を大真面目に語る民明書房は、間違いなく『魁!!男塾』の魅力を引き上げてくれたアイテムである。