コウモリで空を飛ぶ、針で岩を持ち上げる…さすがに無理がある!? 『魁!!男塾』に登場する「ユニークすぎた民明書房の奥義」の画像
DVD『魁!!男塾』巻之壱(ハピネット)

 宮下あきら氏の『魁!!男塾』は、1985年から1991年まで『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載された人気作だ。豪快な塾長・江田島平八が率いる「男塾」を舞台に、過酷なスパルタ教育のもと、男たちの友情と死闘を描いた作品である。

 そして本作を語る上で欠かせないのが、作中に登場する「民明書房」である。これはさまざまな武術の奥義や不思議な現象、歴史的背景などを解説するために引用される“架空の出版社”だ。

 民明書房の記述はもちろんフィクションなのだが、その説得力のある解説は当時の読者にとって実在を信じ込ませるほどだった。しかし今読み返すと「さすがにそれは無理があるのでは……」と思わずツッコみたくなるような奥義や歴史も少なくない。

 ここでは『魁!!男塾』の民明書房に掲載された、ちょっとユニークな奥義を紹介したい。

 

※本記事には作品の内容を含みます

 

■コウモリを使って空を飛ぶ!?「乖宙浮遊體(かいちゅうゆふうたい)」

 まずは男塾の鎮守直廊三人衆の一人である蝙翔鬼にまつわる、民明書房の記述を紹介したい。

 「天挑五輪大武會」にて、淤凛葡繻(オリンポス)十六闘神の搴兜稜萃(ケンタウロス)と戦うことになった蝙翔鬼。そこで彼は「南朝寺教体拳乖宙浮遊體(なんちょうじきょうたいけんかいちゅうゆふうたい)」という技を見せ、空中を浮遊する。

 民明書房によるとこの技は、中国河南省の山奥に生息する1匹あたり5kgもの揚力を持つ特殊なコウモリを使い、空を飛ぶ技術であるという。かつての都尉・安史明は、このコウモリ20匹を使い、万里の長城を飛び越えたという逸話も紹介されているのだ。 

 コウモリを利用して空を飛ぶという発想も驚きではあるが、1匹のコウモリに5kgもの揚力があるという設定もすごい。蝙翔鬼はこのほかにも、コウモリを空中に集めてその上に飛び乗り攻撃をする「驟蝙形象體(しゅうへんけいしょうたい)」というすごい技も持っている。

■口にくわえた針で300kgの岩を持ち上げる!?「纒欬針点(てんがいしんてん)」

 上記の通り、コウモリを使い空中浮遊を見せた蝙翔鬼だが、悔しくも搴兜稜萃に破れてしまう。そんな蝙翔鬼の無念を果たすべく登場したのが月光であり、その戦いで彼が見せた技も驚異的であった。

 月光は搴兜稜萃が乗るユニコーンの刺突に対し、棍の先端だけで受け止める。この技を民明書房では「纒欬針点(てんがいしんてん)」と紹介しており、その修行方法は口に鉄針をくわえてあおむけになり、同じ鉄針つきの岩を落とすというものである。

 最初は5kgから修行をはじめ、纒欬針点を会得した者は最終的には300kgもの岩を口にくわえた針だけで受け止められるという。実際にそのような技ができる人間なんているわけないのだが、民明書房に書いてあると「もしかしたら?」と思ってしまうのが面白い。

 その後、見事ユニコーンを倒し、搴兜稜萃を地上に立たせた月光。人間離れした奥義で、蝙翔鬼の仇を見事に取るのであった。

■負ければ仲間全員が死亡!?「宙秤攣殺闘(ちゅうびんれんさつとう)」

 「宙秤攣殺闘」とは、大威震八連制覇の最終決戦、剣桃太郎と大豪院邪鬼との決戦に導入されたルールである。

 2人が戦う際、男塾の一号生と三号生はそれぞれ鉄檻に入れられ、巨大な天秤にかけられた。天秤は全員の体重に見合う分銅でバランスが保たれているが、分銅の底には穴が開いていて砂鉄が流れ落ちている。桃太郎か邪鬼、どちらかの勝者が早く鉄扉を開けて仲間を救出しなければ、鉄檻は落下し、中にいる全員が命を落としてしまうというものである。

 民明書房によるとこのルールは、その昔対立していた武術の二大流派、南陽拳と北陰拳の長きにわたる抗争に終止符を打つため、皇帝の命によって一度だけ導入されたものだという。

 今読み返すと、塾生の数十人が乗ってもバランスをとっている鉄檻は単純にすごい。この天秤の設計は、令和の今でもなかなか実現は難しいだろう。

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