■槍術アクションが炸裂!『精霊の守り人』
上橋菜穂子さんの人気ファンタジー小説を原作に、NHK放送90年を記念して制作された大河ファンタジー『精霊の守り人』(2016年〜)。壮大なスケールと本格アクションで話題を集めた本作で、綾瀬さんが挑んだのは、“短槍使いのバルサ”の異名を持つ凄腕の用心棒という異色の役どころだ。
前述の小曾根百合や伊佐山菜美が持つ女性的なしなやかな強さとは対照的に、バルサは無骨で男勝り。寡黙ながらも信念を貫く戦士というキャラクターを、綾瀬さんは全身を使って力強く表現している。
見どころは、やはり第1話から炸裂する“槍術アクション”だろう。バルサを体現するため、綾瀬さんはクランクインの半年前から準備を開始し、受け身の基本動作、体幹トレーニング、ボクシング、そして槍を使った殺陣の稽古と、あらゆる角度から身体を徹底的に鍛え上げたという。
さらに注目すべきは、衣装のディテールである。とくにバルサが身にまとうショールやロングコート、革製のチョッキは戦闘を前提としたデザインになっており、見た目の美しさと実用性を兼ね備えた“リアルな戦闘服”として、本作の独自の世界観を見事に支えている。
そして迎えたシーズン1の最終話。精霊の卵を狙う化け物・ラルンガとのラストバトルでは、綾瀬さんの体を張ったアクションと、当時の最先端VFXが融合。幻想的で迫力に満ちた映像に、筆者自身も思わず画面に釘付けになってしまった。
続くシーズン2以降、物語はさらに壮大かつ重厚な展開を見せていく。『精霊の守り人』は、綾瀬さんが確かな演技力と身体能力を兼ね備えた“アクション女優”であることを強く印象づけた作品であった。
天真爛漫なコメディから時代劇、ファンタジー、そして本格アクションまで、綾瀬はるかさんは実に多彩な作品で観る者の心を惹きつけてきた。その中でも「アクション」は、彼女の内に秘めた芯の強さと、プロとしてのストイックさが最も鮮やかに浮かび上がるジャンルなのかもしれない。これからも、綾瀬さんのアクション演技から目が離せない。