
少女漫画雑誌『りぼん』(集英社)で1995年2月号から1997年10月号まで連載されていた、矢沢あい氏の大ヒット作『ご近所物語』。本作は、主人公・幸田実果子が恋愛や夢に全力でぶつかっていく姿が印象的で、見る人に元気を与えてくれる大ヒット作だ。
矢沢氏らしいおしゃれな雰囲気も見どころで、1995年9月からはテレビアニメ化。約1年にわたって放送された。
単行本は全7巻、アニメは全50話で終了した本作だが、実はアニメ放送時は原作が完結していなかったため、アニメ版オリジナルの展開や設定も多かった。
そこで今回は、矢沢氏の『ご近所物語』の原作漫画とアニメ版の違いを作品の見どころとともにご紹介しよう。原作派の人は、その意外な展開に驚いてしまうかもしれない。
※本記事には各作品の内容を含みます
■実果子とツトムはどうなった?2人の恋の行方は…
『ご近所物語』の見どころの1つは、実果子と同じマンションの隣の部屋に住む、山口ツトムとの恋の行方だろう。
幼い時から一緒にいたことで、互いへの恋心を自覚しないまま成長した2人。だが、交友関係が広がり嫉妬から恋心を自覚したツトムと、彼からの深い愛情を感じたことで恋愛対象として意識し始めた実果子は、のちに恋人同士となる。
2人に転機が訪れたのは、実果子がショーでグランプリを受賞し、ロンドンへの留学の権利を射止めた時だった。
ずっとデザイナーになる夢を追い続けていた実果子。だが、大好きなツトムと離れることにも不安を感じ、なかなか決断できずにいた。
そんな時、ツトムから「笑ってバンザイしてありがたく行って来い!」と背中を押されたことで、ようやく実果子は決意する。恋人との日々よりも夢を選択した実果子を見て分かるように、本作のテーマはキャラクターの恋愛模様だけでなく、夢を追いかける熱い物語でもあった。
なかでも「手に入れたいのはハッピーエンドじゃない 鍛え抜かれたハッピーマインドだ」という実果子の名セリフは本作を象徴するものだろう。その言葉通り、自分の心に嘘をつくことなく我が道を貫く彼女の姿はとてもカッコ良かった。
アニメ版でもそんな『ご近所物語』の魅力は表現されている。公式サイトにて「夢と恋と友情のはざまで揺れる青春グラフティ」と紹介されていたが、原作同様、ただの恋愛物語ではなく、夢に向かって葛藤し、それぞれ奮闘するキャラクターたちの姿がカラフルな色彩とポップな音楽とともに描かれていた。
アニメ版は実果子の母・留里子が入院し、元夫・櫻田広彦とヨリを戻すところまでの内容であるが、実果子が進む未来が新たな希望に満ちていることが分かる結末となっている。
■バディ子は誰とくっつく? アニメオリジナルの展開が描かれた
本作で忘れてはならないキャラクターが、ナイスバディ子こと、中須茉莉子だ。
ツトムと恋仲になったりと何かとお騒がせな茉莉子。作中では失恋を支えてくれた田代勇介に惹かれ恋人同士になるが、ケンカが絶えない関係が続く。やがて勇介を好きな及川歩が現れ、茉莉子と勇介の関係はすれ違い始める。
自分の夢を持つアキンドのメンバーと比べて、茉莉子は自分の気持ちに迷いがあった。そんな時、単位取得ができず卒業が危ぶまれたことから自主退学を選ぶ。このことがきっかけとなり、茉莉子と勇介は破局することに……。
その後、茉莉子は地元へ帰り、長年片想いしていた幼馴染の新谷修司と恋人同士に。結婚というハッピーエンドを迎えるのが、原作での結末だった。しかし、アニメ版では違った未来が描かれている。
茉莉子と勇介、歩の三角関係はアニメ版でも後半の主軸として描かれ、勇介が茉莉子と歩の間で揺れたり、茉莉子が嫉妬して2人の関係が険悪になったりと困難を乗り越えていく。
一番大きな違いは、なんと茉莉子と勇介がカップルになったことだろう。そのため、原作のように勇介と歩が付き合う展開は見られなかった。
加えて、アニメ版では茉莉子は自主退学せず、インテリアデザイナーとしての道を歩もうとするなど、行く末は全く違うものとなっている。ある意味、彼女が一番原作とアニメで歩む道に大きな違いが出たキャラクターとなったといえる。茉莉子&勇介のカップルが好きな人は、ぜひアニメ版を見てみてほしい。