■実果子のその後の姿が描かれた『Paradise Kiss』
ロンドン留学という大きな決断を下した実果子。そんな彼女の「その後」を見ることができるのが、本作の続編でもある『Paradise Kiss』だ。
ファッション誌『Zipper』(祥伝社)で1999年から連載された本作は、恵まれた容姿を持つ主人公・早坂紫が、自主ブランド「パラダイス・キス」を立ち上げるメンバーに出会い、モデルとして成長していく姿が描かれた作品だ。
『ご近所物語』と同様、「矢澤芸術学院(通称:ヤザガク)」が登場し、実果子も通った服飾科に通うパラキスメンバーたち。小柄で可愛らしい容姿の女の子・櫻田実和子は、何を隠そう『ご近所物語』の終盤で誕生した実果子の妹だ。
そして実果子本人も『Paradise Kiss』で再登場している。働き口を探していた紫に、実和子が「お姉ちゃんのお店で働かない?」と声をかけたことで、紫は実果子の立ち上げたブランド「ハッピーベリー」の事務所を訪れるのだが、そこで社長として登場したのが実果子だった。
あれから十数年が経ち、夢だったブランドを立ち上げ成功を収めている彼女は少し大人びた印象で、紫にモデルの道を進めるキーパーソンになる。遠目に見ると実和子そっくりな実果子は、36歳には見えないビジュアルだ。だが、学生時代にはなかった確かな自信やプロとしての風格を漂わせていた。
さらに本作では、ツトムもプロのカメラマンとして登場する。2人は遠距離恋愛を経て、結婚し、なんと子どもも誕生していた。その間の詳細は描かれていなくとも、それぞれが努力を重ね、夢も幸せも掴んだことが分かる。
また、アキンドのマスコットキャラクター「ハッピーベリーちゃん」が実果子のブランドのマークになっていたり、実果子とツトムを繋いだ『Honda』のバイク「スーパーカブ」の「サリーちゃん号」も登場するなど、サプライズも満載の『Paradise Kiss』。『ご近所物語』のファンにとってはたまらない作品だ。
矢沢氏屈指のヒット作『ご近所物語』は、少女漫画らしい恋愛要素ももちろん楽しめるが、それ以上に「夢」を追いかける実果子の熱量が見どころの物語でもある。彼女が大成した「その後」を知ると、むしろ恋愛は“通過点”だったのかも?と思わされるほどである。
実果子がもがきながらも掴み取っていくハッピーマインドは、当時、多くの少女たちの心に大きな影響を与えたのではないだろうか。
アニメ版でも原作の雰囲気はそのままに、アニメオリジナルの展開も非常に面白いものとなっていた。ぜひこの機会に、原作とアニメ版の違いに注目しながら、作品を振り返ってみてはいかがだろうか。