■詩織ちゃん、マジで「おもしれ~女」だ   

 そんな藤崎詩織だが、本作ではメインヒロインとして必ず登場するキャラクター。そのため、初めは「攻略が簡単な初心者向けキャラクター」だと誤認していた。ところがなんとこの詩織ちゃん、攻略が激ムズなのだ。

 『ときメモ』では主人公の能力や状態が数値化された「パラメータ」が存在するが、詩織ちゃんは高嶺の花らしく、主人公のパラメータが低い間は若干よそよそしい。なんなら友好度も他のキャラクターより上げにくいようだ。「私(主人公)ってあなたの幼馴染ですよね? もっと特別扱いしてくれないんですか?」とか思ってしまう。だが、そんなギャップもたまらない。詩織ちゃん、マジで「おもしれ~女」である。

 また、帰宅中に女の子に遭遇すると「もしよかったら一緒に帰らない?」と誘える下校イベントが発生するのだが、詩織ちゃんはパラメータや友好度が低いと「一緒に帰って友達に噂とかされると恥ずかしいし」とエグい切り口で断ってくる。私は社会を一通り渡り歩いた30歳女なので、このセリフを「グッッッ!!」と一瞬気絶しただけで耐えたが、多感な時期に好きな人に言われたらおそらく1週間は寝込むだろう。

 後ほどネットで調べてみると、詩織ちゃんの「一緒に帰るのが恥ずかしい」発言は多くの男性プレイヤーの心にトラウマを植え付けてきたらしい。私は人生で初めて、会ったこともないときメモ愛好家たちと気持ちが通じ合った気がした。

藤崎詩織からの辛辣な一言…。 ©2025 Konami Digital Entertainment

 「今日は予定があるから」とやんわりと断ってくれたらいいのに……。逆恨みしかけたが、よくよく考えると詩織ちゃんも普通の女子高生。「なんとも思っていない異性と一緒に歩いて余計な噂を立てたくない」と思うのは当たり前かもしれない。

 私は「幼馴染の優しい女の子」というステレオタイプを詩織ちゃんに勝手に当てはめて、「幼馴染キャラクターのくせに、なんてひどい断り文句なんだ! 小さい時は一緒に遊んでたのに!」と一人憤慨してしまっていただけだ。

 でも憎めないのが、ゲームが進むにつれて詩織ちゃんの態度が軟化していき、ちょっとずつ「特別な存在」として意識してくれる感じがひしひしと伝わってくる。なんなら詩織ちゃんから「一緒に帰らない?」と誘ってくれる下校イベントも発生する。詩織ちゃん、なんとも想いの寄せがいがある女だ。

 一筋縄ではいかない、リアルな等身大の女の子。この妙なリアルさが『ときメモ』の持つ不思議な引力であり、ゲームとしての面白さを一段階上げてくれる一因なのかもしれない。

 『ときメモ』が一時代を築いたのは、魅力あるキャラクターの存在が大きいだろう。だから私だって、もっと他のキャラクターちゃんたちの魅力を語りたい。だが、この記事を読んだ人にはまず、藤崎詩織ちゃんの良さを知ってほしかった。メインヒロインにして、絶対的ヒロイン……。そんな詩織ちゃんに会うためだけでも、『ときメモ』をプレイする価値は絶対にある。

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