
多くの人気俳優を輩出してきた『仮面ライダー』シリーズは、若手俳優にとっての「登竜門」として広く知られている。本作に出演したのち、瞬く間にスター街道を駆け上がっていく俳優たちは後を絶たない。
だが、『仮面ライダー』の魅力は、単なるキャリアの出発点にとどまらない。デビュー間もない俳優たちがそれまでに培ってきた「特技」や「経験」を生かし、それが物語の一部として組み込まれる……そんな柔軟さも持ち合わせる懐の深い現場であることも本作の特徴だろう。
そこで今回は、そんな『仮面ライダー』シリーズで「持ち前の特技」を披露した俳優たちにスポットを当て、その特技が光ったシーンとともに紹介していく。
※本記事には各作品の内容を含みます
■「ブレイクダンス」で魅せた憑依アクション『仮面ライダー電王』佐藤健
2007年から放送の『仮面ライダー電王』で、主人公・野上良太郎(仮面ライダー電王)を演じた佐藤健さん。高校時代には毎日のように駅前で練習していたという佐藤さんの特技「ブレイクダンス」は、作中で見事に活かされた。
佐藤さん演じる良太郎は、複数の“イマジン”に憑依されてしまう特殊なキャラクターだ。その中でも、ダンス好きのリュウタロスに憑依された際には、佐藤さんのキレのあるブレイクダンスがふんだんに披露されることとなった。
とくに印象的だったのが、リュウタロスが初登場する第13話「いい?答えは聞いてない」だ。憑依された良太郎はテンションも性格も一変し、公園を占拠していた若者たちに接近。ブレイクダンスの技「ウィンドミル」で彼らを吹き飛ばし、懲らしめるという痛快な場面が描かれた。その後は、なぜか彼らを引き連れてダンスを楽しむという破天荒な展開へ……。
これらのノリノリなダンスシーンは、すべて佐藤さん本人によるパフォーマンスだったという。リュウタロスの子どもっぽさや突飛な性格を、見事に「ダンス」で表現してみせた。
俳優自身の特技とキャラクターが見事にシンクロした、シリーズでも理想的な特技披露シーンだったと言えるだろう。
■魂の「ダブルダッチ」を披露『仮面ライダーフォーゼ』福士蒼汰
2011年から放送の『仮面ライダーフォーゼ』で、主人公・如月弦太朗(仮面ライダーフォーゼ)を演じた福士蒼汰さん。高校時代にはダブルダッチ部に所属し、文化祭でのパフォーマンスを通じて“人前に立つ楽しさを知った”と明かしており、その経験が俳優としての道を志すきっかけにもなったという。
そんな福士さんの特技「ダブルダッチ」が活かされたのが、第39話「学・園・法・度」。生徒会長代理となった杉浦雄太が“学園法度”を定め、天ノ川学園を厳しく取り締まり始める。それを止めさせるべく弦太朗たち仮面ライダー部は、それぞれの特技を武器に杉浦へと勝負を挑むことになった。
このエピソードで、弦太朗が選んだのがダブルダッチ対決だった。縄をくぐりながらのバク転や、「ドンキー」と呼ばれるアクロバティックな技を次々に披露する。一朝一夕ではできないであろう動きのひとつひとつに、福士さん自身の身体能力と経験が滲み出ていた。
全身を使って表現されたこのパフォーマンス、弦太朗曰く「魂のダブルダッチ」は、明るくポジティブな彼のキャラクターに非常にマッチしており、特技と役柄が見事に融合した名場面となっていた。