
尾田栄一郎氏が描く『ONE PIECE』の世界において、極めて重要なアイテムの1つである「悪魔の実」。ひと口かじれば超人的な力を得られ、“能力者”と呼ばれる存在となる。作中では主人公のモンキー・D・ルフィをはじめ、たくさんのキャラクターがこの実を口にし、人間離れした能力を得てきた。
これまでこの「悪魔の実」については、“食べるとカナヅチになる”、“2つ以上食べると体が跡形もなく飛び散る”など、語られてきたことはいろいろあった。しかし「なぜそうなるのか?」という部分は未だ明かされておらず、謎のままになっているところも多い。
今回は、未解明な部分が多い「悪魔の実」にまつわる謎について迫っていこう。
※本記事には各作品の内容を含みます
■なぜ「悪魔の実」を食べるとカナヅチになるのか?
まずは、第1話より語られ続けてきたことであり、そして紛れもない事実である「悪魔の実の能力者はカナヅチ=泳げなくなる」という現象。
悪魔の実は“海の悪魔の化身”とも称され、それを口にしたものは例外なく海に嫌われるという。海だけではなく、川、湖、さらには風呂に至るまで、水の溜まっている場所では力が抜けてうまく能力を発揮できなくなってしまうのだ。
このカナヅチになる理由について、“世界最大の頭脳を持つ男”と称される天才科学者・ベガパンクが、自らの仮説をもとに言及していた。
1069話にて「“悪魔の実”とは……!! 誰かが望んだ『人の進化』の“可能性”である!!!」とし、人が思い描く人類の未来こそ、悪魔の実に宿る能力であるという説を説いた。
そして「従ってその“不自然”は 自然の母“海”に嫌われるという罰を背負って存在する!!!」とし、悪魔の実の存在そのものが不自然であるゆえ、その能力を手にした人物は自然そのものである海から嫌われ、カナヅチという結果にいきつくと説いたのだ。
もちろん、これは確定した事実ではない。説を提唱したベガパンク自身、あくまでも仮説であるとしたうえで、麦わらの一味たちに説明している。
海を「母」と形容するうえで思い出されるのが、元四皇・白ひげの発言である。エースが自身の出自を打ち明けに来た際に「誰から生まれようとも… …人間みんな海の子だ!!」と返していた。
『ONE PIECE』の世界でも生命の起源を海としているなら、悪魔の実は海を起源としない存在であり、ベガパンクが言うところの「不自然」によってカナヅチになるという“呪い”を受けているのかもしれない。
■悪魔の実を2つ食べると体が飛び散るって本当?
悪魔の実にまつわる話の中で、かなり前から知られていることがもう1つある。それが、1人の人間が実を2つ口にすると、体が跡形もなく飛び散って死ぬ、という恐ろしいものだ。
最初にこの話が出てきたのは、原作第385話「エニエス・ロビー編」でのこと。元CP9の一員であるブルーノが、“偉大なる航路(グランドライン)”の学者によって能力の伝達条件は解明されており、実を2つ口にした者の事例があると、明かしている。
この話が本当だとするなら、すでに悪魔の実を2つ口にして、実際に体が粉々に吹き飛んだ事象が観測されたことになるのだ。悪魔の実の伝達条件が解明済みで、かつ2つの実を食した結果が実証されているのであれば、どういったメカニズムでこの現象が起きるのかも分かっていそうなものだが……。
ここでも関係してきそうなのが、ベガパンクの発見の1つ「血統因子」の存在だ。すべての詳細は明らかにされていないが「生命の設計図」と呼べる代物で、元同僚のシーザー・クラウンが作り出す「人造悪魔の実(SMILE)」などに用いられている。
2年後には王下七武海に代わる新戦力として「セラフィム」が開発されているが、そこに超人(パラミシア)系能力者の血統因子を読み解いたことで作られた人工血液「グリーンブラッド」が使われており、さらに元となった能力者の能力複製に成功しているという。
これが関与しているとすれば、1つ目の悪魔の実の力が血統因子に書き加えられたゆえ、そこに2つ目の能力が入る余地はなく、拒絶反応のようなものを起こすと考えられないだろうか。
まだ考察の域を出ないものではあるが、だからこそグラグラの実とヤミヤミの実、2つの悪魔の実の能力を身に宿せる黒ひげことマーシャル・D・ティーチの存在が異質さを感じさせる。