■久住くんより司のほうが人気だった⁉ その理由も今なら分かる

 『星の瞳のシルエット』の魅力は、男性キャラにもあった。まずは香澄や真理子、また「高校編」で登場する吉祥寺啓子からもモテモテの久住だが、当時は彼より司のほうが人気があった覚えがある。

 彼も久住のように、女子からモテまくるプレイボーイ気質の少年だ。香澄のもう一人の親友・泉沙樹の幼馴染であり、沙樹はずっと司のことが好きだ。しかし司の心は香澄に向いており、彼もまた自分の気持ちを押し殺し、久住を想う香澄を陰で支えている。

 司は久住を狙おうとする女子を止めるべくさりげなく行動に移したり、香澄が悲しんでいるときにはそばにいたりと、とにかく優しい。一方、久住は物語後半で真理子と付き合うのだが、彼女への気持ちがない彼は電話を切ったあと、“あんまり話すことない”などと言っている。いわば香澄と同様、ちょっと天然気味に人を傷つけることもあり、当時の彼女である真理子が気の毒に思えてしまう。

 こうして比較すると、司のほうが人の気持ちを思いやることができ、いつも香澄を影で支える姿はとても素敵で好感が持てた。普段は女ったらしの司が、「とにかくオレは…待っているから」などと時折見せる真剣な姿も、読者にとっては胸キュンポイントだっただろう。

 『星の瞳のシルエット』が人気を博した理由は、ヒロインの本命ではなかった司の存在もきっと大きかったと思う。

 

 昭和の乙女たちの心を鷲掴みにした『星の瞳のシルエット』。読み返してみると、パンを口にくわえて登校したり、貧血を起こしたヒロインをプリンスがお姫様抱っこして保健室へ運んだりと、少女漫画の王道シーンも満載で面白い。また当時連載中の『りぼん』全員プレゼントにおいて「星のかけら」があったのも懐かしい思い出だ。

 『星の瞳のシルエット』は、今でも多くの漫画サイトで楽しめる。当時読んでいた人もこれから読む人も、ぜひ手に取ってほしい名作だ。

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