
【連載】宇内梨沙「ひねもすぬまりぬまりかな」第4回
6月26日、小島秀夫監督率いるコジマプロダクションの最新作『DEATH STRANDING2:ON THE BEACH』(ソニー・インタラクティブエンタテインメント)が発売されます。
ナンバリングタイトルであることからも分かるように、もちろん前作があります。興味はあるけれど、今からプレイして間に合うのか、自分に合う作品なのか。そんなふうに迷っている方へ向けて、前作『DEATH STRANDING(デス・ストランディング)』とは何だったのか。その魅力を今一度振り返り、新作に向けて胸を高鳴らせる準備を整えたいと思います。
小島秀夫監督は、ゲームというメディアを通じて、私たちの世界に普遍的なメッセージを投げかける、唯一無二の語り手です。
1作目の『デス・ストランディング』が発売されたのは、2019年11月8日。小島監督といえば、世界的に人気を誇る『メタルギアソリッド』シリーズの生みの親。コナミを離れ、自身のスタジオから初めて送り出したタイトルが、この『デス・ストランディング』でした。
「はたして、あの小島監督が、制約なく自由に作るゲームとは、どんなものなのか?」世界中のゲーマーの期待と注目のなかで登場した本作は、ある意味で誰の予想も超える、非常にユニークな作品でした。
主人公は、サム・ポーター・ブリッジズ。演じるのは、ドラマ『ウォーキング・デッド』で人気のノーマン・リーダスです。
舞台は、崩壊したアメリカ。プレイヤーは伝説の配達人・サムとなり、無人の荒野となった北米大陸に「カイラル通信」と呼ばれるネットワークを張り巡らせ、人と人との繋がりを取り戻す旅に出ます。
人々が地下シェルターで生活するようになったため、配達人の存在は貴重です。サムは依頼を受け、荷物も運びます。いわば「配達ゲーム」とも言える内容ですが、ただの移動や運搬が、クセになる。それがこの作品の不思議な魅力となっています。
銃を撃ちまくるわけでも、ド派手な演出が連続するわけでもありません。
ただ、歩く。
人は全く出てきません。荒野をひたすら歩きます。
重い荷物を背負い、風雨に晒され、地形に翻弄されながら、一歩一歩を踏みしめて進んでいく。その過程で転んだり、荷物を壊してしまったり、時にもどかしさすら感じるかもしれません。それでも、プレイヤーは次第にその行為に没頭していきます。
私が印象に残ったシーンは、雪山です。急勾配の雪山を登るには、それなりの装備が必要になります。滑落のリスクはもちろん、吹雪くときは視界も悪くなり、行く手を阻む敵も出現します。
しかし、なんとか最短距離で進みたい、せっかちな私は装備も脆弱な状態で足を踏み入れました。