■「人類は諦めない」小島監督からのメッセージ
制作する上で、安部公房の小説『なわ』から着想を得たとも語っており、人を遠ざけるための「棒」と人を繋ぐための「縄」、どちらを選ぶか2つの選択をプレイヤーに問いかけてきます。
ゲーム中には「敵を殺すと世界に悪影響が及ぶ」という仕様があります。そのため、多くのプレイヤーは敵を殺さず無力化する手段を選びますが、それは単なる仕様ではなく、「繋がるために暴力を選ばない」という本作のメッセージを、自らのプレイで実感することができるのです。
そして、旅の果てに知る物語には、「愛」や「繋がり」への問いかけが込められており、「分断」が起きようとも、それでも「人類は諦めない」。そんなメッセージを、作品全体から感じることができます。
ゲームをプレイしながら、小島監督から届けられたそのメッセージを汲んだ時、私は自然と涙してしまいました。
ラストのシーンを思い出すだけでグッとくる。難解そうにみえて、実はとても普遍的。だからこそ共感し、泣いてしまうんです!
続編となる『デススト2』でも、サムは人々を繋ぐ旅を続けることになります。舞台はメキシコからオーストラリアと海を超えたスケールになるようで、「繋ぐ」というテーマの深みが増すのではないでしょうか。
トレーラーでは、「人々を縄で繋げば繋ぐほど、より一層、棒が必要になる」という示唆的な語りが登場します。それは、今なお争いが絶えない現実に向き合い、人類が抱える根源的な問いを提示するかのようです。
サムが繋げた世界は、意味がなかったのでしょうか。
「繋がり」がもたらしたものは、光なのか、影なのか?
これは『デススト3』へと続く道なのか、それとも終着点なのか?
その答えを確かめるために、私はまた、あの世界を一歩ずつ踏みしめていきたいと思います。
【プロフィール】
宇内梨沙(うないりさ)
ポップカルチャーを心から愛する元アナウンサー。2015年、TBSテレビに入社。アナウンサーとして多数の番組を担当する一方、ラジオやYouTubeなどでゲーム偏愛を披露。2025年にTBSを退社し、現在は『Twitch』でゲーム配信者として活動中。