■恋愛ものから謎解きミステリーへ…『プライベートアイズ』野村あきこ
1995年から『なかよし』で連載された『やまとなでしこ同盟』は、学校一のモテ男・宗本忍に恋をした主人公・坂吹良子が、同じく忍に思いを寄せる女子たちとともに、“抜け駆け禁止”の「やまとなでしこ同盟」を組み、恋に友情に奔走する物語だ。
恋愛はもちろん、3人の女の子の友情模様も楽しめる本作は、野村あきこさんの持ち味でもある優しいタッチでホッと心が温まるような少女漫画らしい作品である。
そして、この『やまとなでしこ同盟』のあとに連載されたのが、『プライベートアイズ』だった。
全寮制の女子校「聖園学園」を舞台にコミカルなタッチで描かれた謎解きミステリーで、恋愛を主軸にした前作からガラリと雰囲気が変わっている。
主人公・清宮里花は、ある日、ルームメイトの森村時緒が実は男の子であることを知ってしまう。さらに時緒は、学園で巻き起こっている怪事件の真相を探るため潜入してきたスパイであると明かされるのだ。
現実離れした展開に混乱する里花だったが、次々と起こる不可解な事件に取り組んでいく時緒に協力し、ともに真相を突き止めていく……というストーリーだ。
普段はとぼけているのにいざとなるとかっこいい時緒が好きだったのは、筆者だけではないだろう。シリアスな展開だけでなく学園ものらしい恋愛要素もあり、野村さんの軽快なテンポで物語が進むため、とても読みやすい。まさに子どもから大人まで楽しめるミステリーの傑作である。
あの頃、夢中になって読んだ少女漫画たち。大好きな漫画家の連載が終わってしまうと寂しい気持ちと同時に「次にどんな作品が描かれるのだろう」と、楽しみにしていたことを思い出す。
今回紹介したように、大ヒットの恋愛漫画のあとで突然ミステリー作品が発表されて驚いたファンも多いだろう。だが、名作を生み出した作者たちは、少女漫画界に残る珠玉のミステリーを描いていた。未読の人は、ぜひこの機会に読んでみてはいかがだろうか。