■双子ならではの“入れ替わり”の最中におきた悲劇:ももち麗子『いのち』
双子は顔が似ているがゆえ、ときに“入れ替わり”をするシチュエーションも多い。最後はそんな双子ならではの入れ替わりが招く、衝撃的な作品を紹介したい。
2008年9月号より少女漫画誌『デザート』(講談社)で掲載された、ももち麗子氏の『いのち』は、顔がそっくりな双子の姉・ことりと、妹・のばら”を中心に展開される人間ドラマだ。
彼女たちは父が事故死して以来、母と祖母のもとで別々に暮らしていた。しかし2人は周囲には内緒で入れ替わり、それぞれの家を行き来していた。
だがその最中、のばらを狙ったであろう犯人により、姉のことりが殺されてしまうのだ。すべては自分のせいだと思ったのばらは、それ以来、ことりとして生きていくことを決意し、姉を殺した犯人を追い詰めていく。
ことりとして生きることを選んだのばらは、深い悲しみと罪悪感を抱えながら、真相究明に奔走する。「自分のせいで……」「……しなければ」と後悔を募らせるシーンも多く、自身の片割れのような存在を失ったのばらの悲しみがいかに大きいかが分かり、読んでいて胸が詰まってしまう。
本作はタイトル通り「いのち」について考えさせられる作品であり、日本の司法制度や、命を失ったことで崩壊した家族の再生も描かれている。双子の姉妹の絆の深さ、そして1人の少女が背負う覚悟の重さに胸を打たれる作品である。
こうして振り返ってみると、双子が亡くなってしまう作品は重厚なダーク感漂うものが多く、通常の恋愛少女漫画とは一線を画していることが分かる。少女漫画において双子という存在は、抗えない悲劇の宿命を抱えているのかもしれない。
ちなみに、現実的には全出生における双子が生まれる割合はわずか約1%だという。自分自身が双子ではないからこそ、双子が登場する作品に興味を持ち、惹かれる読者も少なくないだろう。
ぜひこれを機に、双子が登場する漫画を読み直してみてはいかがだろうか。