
経済成長に日本社会が大きく揺れた1980年代。当時は漫画界も大いに盛り上がり、なかでも『週刊少年ジャンプ』(集英社)は「ジャンプ黄金期」と呼ばれる時期に突入。歴史に残る数々の名作が誕生した時期でもある。
魅力溢れる個性的な作品に読者は心を躍らせたものだが、なかにはファンの人気や注目度とは裏腹にあまりにも早く連載を終了してしまった作品も存在する。「これからいいところなのに……!」と、残念に思った子どもたちも多かっただろう。
そこで、誰しもが続きを心待ちにしてしまった、「80年代の隠れたジャンプ名作漫画」を見ていこう。
※本記事には各作品の内容を含みます
■圧倒的画力で描かれるSFバトルアクション『CYBERブルー』
劇画調の力強い描線が特徴的で『北斗の拳』(原作:武論尊氏)をはじめ、数々の名作を世に送り出してきた漫画界の巨匠・原哲夫氏。
そんな原氏が1988年から連載したのが、SFバトルアクション漫画『CYBERブルー』(原作:BOB氏、脚本:三井隆一氏)だ。
本作の舞台となるのは、地球から最も遠い場所に位置する植民惑星・ティノス。この星で孤児として暮らす主人公の少年・ブルーは悪徳保安官のせいで一度は命を落としてしまうのだが、作業用ロボット・ファッツと融合し、新人類・サイバービーイングへと生まれ変わる。そして彼はティノスや地球をも征服しようとする巨悪を止めるため、苛烈な戦いへと身を投じていくのだ。
本作の見どころはなんと言っても、原氏の圧倒的な画力で描かれるバイオレンスアクションの数々だろう。
ブルーは弱者を食い物にする卑劣な悪党たちを人智を超えた力を駆使し、卓越した銃捌きで撃破していく。超人的な能力で真っ向から打ち砕いていく彼の姿には、凄まじいカタルシスを得られること間違いなし。物語冒頭から強烈に惹きつけられてしまう。
『北斗の拳』に次ぐ大ヒット作のポテンシャルを秘めていた本作だが、わずか31話で物語は完結してしまった。
約半年間という短期間連載ではあったものの、その独特の世界観から根強い人気を誇り、2010年から連載された『サイバーブルー 失われた子供たち』(吉原基貴氏)をはじめ、数々のリメイク作が登場。さらには2013年にパチンコ化されるなど、メディアミックスもおこなわれた。
時を経てもなお、ファンに愛され続ける『CYBERブルー』。その後の展開を見ても、当時からいかに注目されていたかがうかがえる。
■最終回寸前でまさかのサプライズゲストが!?『SCRAP三太夫』
1979年より連載された、大人気プロレス漫画『キン肉マン』を手がけたゆでたまご(原作:嶋田隆司氏、作画:中井義則氏)。バトルや友情を織り交ぜた熱い展開と怒涛のギャグシーンが特徴で、当時の少年少女たちを虜にした。
彼らが1989年から同誌で連載したのが、ロボット警官を主人公にした新機軸のギャグ漫画『SCRAP三太夫』だ。
テクノロジーが発達した未来の世界を舞台に、バケツ頭のドジで臆病なダメロボット・三太夫が悪を懲らしめるべく奮闘する本作。バトルシーンもあるものの、寄せ集めの品で作り上げられた三太夫のビジュアルをはじめ、かなりコミカルな展開が繰り広げられるギャグ寄りの作風が魅力だ。
さらには大胆な下ネタや社会風刺ネタも登場したりと、かなりインパクトのある作品だったのだが、単行本にして2巻という短さで物語は終了してしまっている。
そんな本作だが、実は最終話の直前でなんと『キン肉マン』と同じ世界線の物語であることが判明している。お馴染みの人気キャラ・ウォーズマンが登場し、回想のなかに数々の超人たちの姿が描かれるなど、思いもよらぬコラボで読者を騒然とさせた。
ロボットを題材とした作品であることから、ロボット超人であるウォーズマンが作品の架け橋となっているのは、実にうまい演出だといえるだろう。
短い作品ではあったものの、その強烈なギャグセンスと最後に待ち構えていたまさかのサプライズにより、知る人ぞ知る貴重な一作となっている。