
実写版ドラマ『金田一少年の事件簿』は、主人公の金田一一役を変えながらシリーズ化されているメガヒットコンテンツだ。若手俳優の登竜門的な側面もあり、犯人役も多くの人気俳優や将来を嘱望される若手俳優が演じることが多かった。
その再現度にも注目が集まっており、金田一とヒロイン・七瀬美雪の他に「はまり役」と絶賛された俳優も少なくない。中でも犯人役は強烈な印象を残し、その「怪演」が多くの視聴者の記憶に残り続けている。
※本記事には作品の核心部分の内容を含みます
■『上海魚人伝説』の楊蕾麗役・水川あさみ
実写版『金田一少年の事件簿』といえば、堂本剛さんが主演を務めた初代金田一を思い浮かべる人も多いはずだ。その中でも上海を舞台にする劇場版『金田一少年の事件簿 上海魚人伝説』は、名作として知られている。
本作ではテレビシリーズから続いてきた金田一と美雪の関係性に大きな進展がみられることも魅力だが、凄惨な連続殺人を実行する犯人役・楊蕾麗(ヤン・レイリー)の存在も衝撃的だ。
作中では、「呪い歌」に合わせて、レイリーが所属する雑技団の団員が殺されていく連続殺人事件が描かれた。全体的にじめじめとした雰囲気で、不気味な事件が記憶に刻まれる名作だが、序盤ではレイリーの無邪気で愛らしい姿も楽しめる。
レイリーは美雪の文通相手で、日本語を話せる中国人である。一生懸命コミュニケーションを取る姿や、屈託ない笑顔が印象的だった。彼女を演じたのは、数多くのドラマや映画で活躍する女優・水川あさみさん。この作品は水川さんにとっては映画デビュー作だったのだが、その瑞々しい演技に引き込まれてしまう。
レイリーは当初、金田一と美雪の協力者のような立場だったにもかかわらず、実は彼女こそが連続殺人事件の犯人という衝撃の真相が暴かれる。さらに彼女は中国人ではなく、本当は「小林麗美」という名の日本人だったのだ。
真相が明かされてからは、レイリーの口調はがらりと変わる。声のトーンも暗く沈んだものになり、まるで別人になったようだった。序盤の明るいレイリーと、終盤の儚さのある小林麗美という2つの顔を演じるのは、決して簡単なことではなかっただろう。
堂本さんと水川さんはその後ドラマ『33分探偵』で探偵役と助手役を務めるなど、親交が深いことでも知られている。今でもバラエティー番組などで共演した際には、相性抜群のトークを見せてくれる。
■『金田一少年の事件簿』の和泉さくら役・遠藤久美子
『金田一少年の事件簿』の中でも切ないエピソードとして知られているのが、堂本版第2シリーズの「怪盗紳士の殺人」だ。このエピソードのヒロインとなるのが、金田一の同級生だった和泉さくらである。
彼女は金田一と同じ高校に通う同級生だったが、家庭の事情で転校してしまった。当時の見た目はおさげにメガネと地味な印象だ。
やがて金田一は、ある事件でさくらと再会することになる。その姿は地味な女の子から一転、眼鏡を外し髪形も変えた超絶美少女となっていた。そんなさくらを演じたのは、90年代に絶大な人気を誇った遠藤久美子さんだ。「エンクミ」の愛称で親しまれるアイドル的な存在だった彼女は、地味な少女が絶世の美女に変貌するさまを見事に体現してみせた。
本エピソードでは美雪の出番がかなり少ない。そのため、さくらはヒロイン的な立ち位置で登場していた。シンデレラストーリーのようなさくらの変化を、遠藤さんは柔和な笑みやゆったりとした仕草で見事表現。金田一を前に少し恥ずかしそうにするようすなどには、年頃の少女らしさが感じられ、そこがまた可愛らしい。
それだけに犯人だったときの衝撃は凄まじかった。彼女は父親の復讐のために殺人を犯したばかりか、自分の命までも絶ってしまうのだ……。ラベンダー畑の中で金田一に抱かれながら命を落とすシーンでは、悲しそうな、けれどどこかほっとしたような微笑みを浮かべていた。その切なくも美しい表情は、多くの視聴者の心に強い印象を残したはずだ。