■小説では強化人間だった「ガンダム三大悪女」のひとり

 最後に紹介したいのは、『機動戦士Vガンダム』に登場するカテジナ・ルース。アニメ内では強化人間になったという具体的な描写はないが、実は小説版にはザンスカール帝国によって強化人間にされた描写がある。

 アニメ版のカテジナは短時間訓練しただけでMSの操縦技術を身に着けている。それも幼少期からさまざまな訓練を受けてきたウッソ・エヴィンと戦えるほどの技量であり、もともとふつうのお嬢様だったことを考えると、強化人間にされていたほうが自然に感じられるほどだ。

 また、ウッソのそばにいた頃は「心優しいお姉さん」という印象だったカテジナは、ザンスカール陣営についてから様子が急変。あれだけ大切に思っていたウッソを「排除すべき敵」と認定し、怒りやイラだちを隠そうともしなかった。

 そんな怖いぐらいのカテジナの変わりように、ウッソだけでなく、多くの視聴者も困惑したはず。次第に危険思想に染まっていき、ヒステリックに非人道的な行為を繰り返すようになると、ガンダムシリーズにおける「三大悪女」のひとりに数えられるほどの存在となった。

 もしアニメ版のカテジナも小説同様に強化人間になっていたのだとすれば、彼女の理解不能な言動にも一応の説明がつく。

 しかし、だからといって『Zガンダム』におけるロザミアやフォウと同じような、強化人間であることの悲劇性を感じるかといえば微妙なところ。それまでに彼女がしでかした行動はあまりにも酷すぎた。

 ちなみに小説版のカテジナはウッソに撃墜されて戦死しているが、アニメではなんと生存。最終決戦後に視力を失い、故郷に帰ろうとする姿が確認できる。彼女のその姿を見て、同情できた視聴者はどれだけいるのだろうか……。


 ガンダムシリーズにおいて、悲しい結末を迎えることが多い強化人間たち。あまりにも悲劇的なラストが多く、印象に残る人物も多い。しかし、なかには強化人間ならではの悲壮感がまったく感じられない異色の人物もいた。ガンダムファンの皆さんは「異色の強化人間」と聞いて、誰を思い浮かべるだろうか。

  1. 1
  2. 2
  3. 3