■元世界王者の実力! 横浜流星が演じた“プロボクサー”
最後は、現在放送中のNHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』では、江戸の出版王・蔦屋重三郎役として時代の荒波を生き抜く男を演じる横浜流星さんだ。
ドラマ『初めて恋をした日に読む話』(2019年)では、ピンク髪の不良高校生・由利匡平役を務め、若さ特有の危うさと情熱を熱演。引き締まった肉体美を披露し、大きな話題を呼んだ。
また『あなたの番です 劇場版』(2021年)の、スタイリッシュかつ切れ味のある格闘シーンも記憶に新しい。やはり横浜さんという俳優の真価が最も輝くのは、“身体を張った”アクションのように思う。
さまざまな実写化作品に出演している横浜さんだが、フィジカルと表現力が極限まで引き出されたのが、沢木耕太郎さんの小説を原作として作られた2023年公開の映画『春に散る』だろう。
横浜さんが演じたのは不公平な判定で敗北し、心が折れかけた若きボクサー・黒木翔吾。かつて同じような挫折を経験した伝説の元王者・広岡仁一(佐藤浩市さん)と出会い、再び世界王者を目指すという物語だ。
役作りにあたって横浜さんは、徹底した食事管理とトレーニングでフェザー級(上限体重57.15kg)に体重を調整。日本ボクシングコミッション(JBC)のプロテストに実際に挑み、C級ライセンスを取得するという徹底ぶりだった。
その背景には、彼が10代から打ち込んできた極真空手の存在がある。中学3年のときには「第7回国際青少年空手道選手権大会」13・14歳男子55kg以下級で世界一に輝いた実績を持つ。
クライマックスは、現役チャンピオン・中西利男を演じる窪田正孝さんとの世界タイトルマッチ。4日間かけて撮影されたこのシーンは、演じる二人が本物の技術と鍛え上げた肉体を備えているからこそ、魂揺さぶる圧巻のボクシングシーンとなっている。
甘いルックスの裏に秘めた、本格的な格闘技経験と卓越した身体能力。今回紹介した俳優たちは、スタントに頼らず自らの肉体でリアリティあるアクションを体現し、実写化作品に圧倒的な説得力と緊張感をもたらしている。
“演技”の域を超え、真に“戦える”からこそ成立するアクションは、観る者の心を揺さぶり、記憶に深く刻まれる名シーンを生み出していた。