■恋の相手が次々変わっていく⁉︎ 『ランダム・ウォーク』
『ランダム・ウォーク』は、人気作『ミントな僕ら』(1997年より連載)のあと、2000年7月号から連載が始まった。
全15回の本作は、タイトルの『ランダム・ウォーク』(規則性がなく、予測できないという理論)に則ったストーリーで、登場人物たちが行き当たりばったりに自由奔放な恋愛を繰り広げていく様子が見どころだ。
主人公や恋の相手が定まっていることが多い少女漫画のなか、恋の相手が次々と変わっていく本作は目新しく、“ありえない設定”が得意な吉住氏らしい作品だった。
父親の教えから「いい恋愛をしていい女になる」ことを目標に掲げる主人公・国友優架は高校入学を機に一人暮らしを始め、気の合う友人とともに楽しい高校生活を送っていた。中学卒業を目前に恋人と破局してしまったことから、高校でも新しい恋愛がしたいと思っていた矢先、自分のタイプのイケメン男子・志木望と出会う。
実は父親の知り合いの息子であった望。出会いはあまりいいものではなかったが、同じ高校の生徒と判明し、優架は運命を感じてどんどん惹かれていく……。
本作は主人公・優架がとにかく明るく、とても前向きなのが印象的だ。周りに次々と素敵な男性が現れるたび、恐れずに恋を楽しむ優架。その姿勢に憧れた“りぼんっ子”は少なくないだろう。
ただ幸せな恋愛だけでなく、時には失う恋も描かれており、多感な女子のリアルな恋愛事情が繊細なタッチで描かれている本作。今、読み返してみても斬新で、吉住氏のセンスが光る一作である。
驚きの設定が特徴の吉住氏の作品たち。芸能界を舞台にした『ハンサムな彼女』や、両親がパートナーを入れ替えて再婚する『ママレード・ボーイ』など、“ありえない”世界観で紡がれる物語は、ファンの度肝を抜き、虜にしてしまう。
今回紹介した作品たちもまた、知る人ぞ知る珠玉の作品ばかりだ。ぜひこの機会に、吉住氏の魅力が詰まった名作たちを読み返してみてはいかがだろうか。